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データを消費者に戻すのが筋

面白い内容です。

森 亮二氏のコラムです。

 

「情報銀行」認定制度始まる

預託された個人情報を活用して消費者に便益を返す「情報銀行」の認定制度が今秋にも始まる。ビッグデータ関連産業を振興するのが国の狙いだが、消費者からの信頼を得るには、個人の権利保護が前提だ。

 「現代の石油」ともいわれるデータに関連する市場が拡大を続けている。調査会社のIDC Japanは、2021年のビッグデータ分析に関連する国内の市場規模が1兆4818億円に達すると予想。とりわけ、広告やマーケティングなどでは、消費者像を的確に描くことのできる精緻な個人情報が、経営資源として重みを増している。

 政府の新たな成長戦略「未来投資戦略2018」も、個人情報の利活用を掲げており、具体的な施策の一つが「情報銀行」だ。まず、クレジットカード会社や銀行、EC(電子商取引)サイトなどが所有している個人情報を、一つにまとめて消費者自身が管理できる「パーソナルデータストア (PDS)」と呼ばれる仕組みを構築する。

 情報銀行はPDSを使う消費者から個人情報の預託を受ける。そしてデータ提供先を探し、提供先企業は割引やポイント、需要に応じた特別なサービスなどの便益を消費者に返す。既に富士通などが実証実験を始めており、情報銀行に取り組む事業者を認定する制度も今秋に始まる見込みだ。

 情報銀行は、膨大な個人情報を単体で抱える米国の「GAFA(ガーファ=グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)」対抗策ともいわれている。つまり、個人情報の流通を促進して、データの保有量が少ない企業でもその恩恵を受けられるようにしようという、産業界のニーズから生まれた計画だ。しかし、既に個人情報の流通が盛んな米国や中国と比べ、日本の消費者は個人情報の商業利用に対し、より警戒感が強いことが総務省の調査で分かっている。個人情報保護の法規制が厳しい欧州と同水準だ。調査会社インテージのアンケートでも、PDSで自身の情報を管理したいという消費者は約64%いたが、情報銀行を利用したい人は34%にとどまる。

 消費者は、個人情報をコントロールできない状況に不安を覚えている一方、情報銀行でその不安を解消できるのか疑わしいと考えている。情報の流通促進で利益をあげようとする産業界からの視点だけでは、消費者のデータは集まらず、情報銀行の構想は絵に描いた餅で終わるだろう。

 本来、情報銀行が果たすべき役割は、個人情報のコントロールを、消費者の手元に取り戻すことだ。欧州連合(EU)は、5月に施行した「一般データ保護規則(GDPR)」で消費者の「データポータビリティ権」を明記し、データを消費者に返す動きを推し進めている。

 データポータビリティ権を使って、消費者は自身が渡した個人情報の開示を請求できる。企業側は、消費者がほかの企業にもその情報を渡してサービスを受けられるよう、構造化した状態でデータを開示しなくてはならない。  日本でも経済産業省、総務省がデータポータビリティに関する検討会を開いており、個人情報保護法改正の優先事項に挙げられたこともある。

SNSの仕組みを応用

 データポータビリティで消費者の手元に戻された情報の受け皿となるのが、情報銀行だ。自身で手堅く管理したいと考える消費者はPDSを利用し、大きな見返りがあるならば情報銀行に預けてもいいという消費者が情報銀行を利用することになる。

 両省は、情報銀行の認定基準についても議論を進めており、6月にはその指針が公表された。消費者にとってよい情報銀行の基準を設定し、候補の事業者を民間の第三者機関が審査する。

 基準案は、経営基盤や情報セキュリティーが盤石であること、データの提供先や利用目的について透明性を確保することなどを認定条件としている。また、消費者による提供の同意撤回を認めること、提供先の落ち度による情報漏洩や流出については情報銀行が損害賠償責任を負うことも求めている。

 認定制度により、消費者の信頼が確保できれば、様々な情報銀行の事業スキームが生まれてくるだろう。

 現在、想定されているのは、提供先企業の社名、業種、企業規模、利用目的などの条件を消費者から事前に聞き取り、その条件の範囲内で提供するスキームだ。しかし、将来的には、提供先候補の企業の意向を消費者に伝え、応諾を得られた限度で情報を提供する仕組みや、匿名化の技術を利用してより慎重にプライバシーを保護する仕組みなどが出てくるだろう。

 また、消費者が個別に指定する提供先とタイミングで、情報提供するサービスも提案されている。SNS(交流サイト)が保有するユーザー情報を転用して、ゲームなど他社のサービスを利用する仕組みを応用するものだ。

 情報銀行のアイデアは、もともと個人情報を利活用する意図から生まれたものだが、消費者目線に立った仕組みが実装できなければ、「預金者」は現れないことに留意すべきだ。