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働き方改革の次の焦点は「雇用終了」の整備

昔は「生きがい」がメインテーマでしたが。

磯山友幸氏のコラムです。

 

「多様な働き方」でルールが不可欠に

「働き方改革法案」の成立はほぼ確実

 国会会期が7月22日まで約1カ月延長されたことで、政府が今国会での最重要法案と位置付けている「働き方改革法案」が成立することはほぼ確実な情勢となった。すでに5月31日に衆議院本会議で可決しており、参議院での審議が進み、本会議で可決すれば、法律が成立することになる。

 残業時間に罰則付きの上限を設けて長時間労働の是正を目指す点については、与野党とも基本的に一致しているが、経営者側の要望で盛り込まれている「高度プロフェッショナル(高プロ)制度」については、野党は激しく反対している。衆議院は委員会で採決が強行されたが、参議院でも数で勝る与党の賛成で、導入が決まる見通しだ。

 高プロ制度は、年収1075万円以上の専門職社員に限って労働時間規制から外せるようにするもので、左派野党は「定額働かせ放題プラン」「過労死促進法案」といったレッテルを貼って反対してきた。

 高プロの対象になる社員は全体の1%にも満たないが、野党は、いったん法律が導入されれば、年収要件がどんどん下がり、対象社員が際限なく働かせられ、今以上に過労死が増えるとしているのだ。

 一方で、ソフトウエア開発などIT(情報技術)人材を多く抱える企業では高プロ制の導入は不可欠だと歓迎する。もともと労働時間と成果が一致しない職種では、時間で管理する意味が乏しい、とかねてから主張してきた。そこに穴が開くことで、今後、日本企業での働き方が大きく変わると期待しているわけだ。

 政府が「働き方改革」を掲げているのは、人口が減少する中で、働く人たちの生産性を上げていくことが、日本企業の「稼ぐ力」を考える上で、不可欠になってくる、という判断があるからだ。かつての工場型製造業が中心だった時代には、生産性論議は同じ時間に1つでも多くのモノを作らせるか、が焦点だった。残業を除けば労働時間が決まっているので、その間にいかにたくさん生産するかが、「生産性向上」だったわけだ。

 ところが、現代のクリエイティブ型の職種では、長時間働いたからといって、成果物がたくさん生み出されるわけではない。むしろ労働時間をフレキシブルにして、短時間でも成果が上がるような仕組みが不可欠になっている。オフィスの中に森を再現したり、リビングルームを作ったりする会社が登場しているのは、いかに仕事の質を高めてもらうか、に力点が置かれていることを示している。

 高プロ制度によって、時間管理を社員に任せ、多様な働き方を認めることによって、より質の高い、付加価値の大きい成果を上げる働き方が可能になる、と期待する会社があるわけだ。

霞が関官僚の「仕事リスト」が決定

 野党が主張する「働かせ放題」にしないためには、導入する企業が対象社員をプロフェッショナルとして扱い、自主性を認めるかどうかにかかってくる。不本意な労働を強いられれば、ストレスは大きくなり、過労死の原因になり得る。

 もっとも、今回の働き方改革法案が通ったからといって、一気に日本型の働き方が変わるわけではない。あくまでも第一歩に過ぎない。だが、一方で、今後人口の減少が鮮明になるについて、人手不足はさらに深刻になっていく。働き方を変えて生産性を上げるだけでは、人口減少を吸収することは難しい。

 政府は6月15日に臨時閣議を開き、『経済財政運営と改革の基本方針2018』と『未来投資戦略2018』、そして『規制改革実施計画』が閣議決定された。1本目がいわゆる「骨太の方針」で、2本目が「成長戦略」である。

 第2次安倍晋三内閣以降、この3つの文書が毎年6月に閣議決定され、内閣の大方針として示されてきた。霞が関の人事は6月末から7月にかけて行われるため、閣議決定されたこの3つの方針が、次の事務年度の「仕事リスト」になっていくわけだ。

 ちなみに今年は、「まち・ひと・しごと創生基本方針2018」が加わり、東京への一極集中の是正など地方対策が柱として加わった。

 これらの「大方針」の中に、深刻な人材不足への対応策として、今年、外国人材に関する新たな在留資格の創設などの方針が明記された。

 「骨太の方針」では「新たな外国人材の受け入れ」として、「従来の専門的・技術的分野における外国人材に限定せず、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受け入れていく仕組みを構築する必要がある」と明記した。さらに、「このため、真に必要な分野に着目し、移民政策とは異なるものとして、外国人材の受入れを拡大するため、新たな在留資格を創設する。また、外国人留学生の国内での就職を更に円滑化するなど、従来の専門的・技術的分野における外国人材受入れの取組を更に進めるほか、外国人が円滑に共生できるような社会の実現に向けて取り組む」とした。

 「未来投資戦略」でも「真に必要な分野に着目し、移民政策とは異なるものとして、外国人材の受入れを拡大するため、現行の専門的・技術的な外国人材の受入れ制度を拡充し、以下の方向で、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材に関し、就労を目的とした新たな在留資格を創設する」としている。

 あくまで「移民政策ではない」としながら、外国人の受け入れに大きく舵を切ったのだ。特に、これまでは「単純労働」として受け入れを認めていなかった建設や造船、農業、宿泊業などの分野に、今後、一気に外国人労働者が参入してくることになりそうだ。

 安倍内閣は人口減少に向けて、「女性活躍促進」や「1億総活躍社会」と言ったキャッチフレーズを掲げ、女性や高齢者の労働市場参入を促してきた。結果、就業者数も雇用者数も過去最多の水準になった。問題は団塊の世代の労働市場からの退出が本格化する今後である。ますます人手不足は深刻化する。外国人人材の受け入れに舵を切ったのも、この人手不足を見据えてのことだ。だが外国人をいくら受け入れても日本人の減少を補うことは難しい。

 では、今後、政府はどんな「働き方」の制度整備を進めるのだろうか。

解雇時のトラブルを金銭で決着可能に

 古くて新しい難問がある。人材の流動化による労働市場の形成だ。時代の流れから取り残された生産性の低い産業から、新しく生まれる新興産業へ、人材をシフトしていくことが不可欠になるわけだ。そこで焦点になるのは、「退職ルール」である。伝統的な日本の大企業は、終身雇用を前提にルールが出来上がっており、ライフステージに合わせて転職するような仕組みを前提にしていない。

 労働法制も、いったん雇用した「正社員」については生涯雇い続けることが前提になっていて、いわゆる「解雇」は慣行で厳しく制限されている。会社が倒産の危機に直面しない限り、簡単に解雇ができないのだ。

 第2次安倍内閣発足直後、成長戦略を作る「産業競争力会議(現在の未来投資会議)」が解雇規制の緩和を打ち出そうとしたが、労働組合や野党の猛烈な反対で立ち消えになった。だがここへきて、深刻な人手不足の中で、流動性を高めて、適材適所を実現することが一段と求められている。

 実は、規制改革実施計画や未来投資戦略には、「次の課題」が埋め込まれている。

 2015年の規制改革実施計画には「労使双方が納得する雇用終了の在り方」が盛り込まれていたが、これを受けて、「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」が設置された。その後、20 回にわたって、雇用終了をめぐる紛争などの多様な個別労働関係紛争の解決手段がより有効に活用されるための方策や解雇無効時における金銭救済制度のあり方について議論がなされた。その報告書がすでにまとめられている。

 その報告書の結果を受け、今後は、法技術的な論点についての専門的な検討を行う場を設け、検討を継続することになっている。

 また、2018年の未来投資戦略には、「解雇無効時の金銭救済制度の検討」として、こう書かれている。

 「解雇無効時の金銭救済制度について、可能な限り速やかに、法技術的な論点についての専門的な検討を行い、その結果も踏まえて、労働政策審議会の最終的な結論を得て、所要の制度的措置を講ずる」

 企業が解雇して訴訟になった場合、裁判所が判決で「職場への復帰」を命じたとしても、実際には会社に戻ることができないケースが多い。その際に金銭で決着するルールを整備しようというのだ。労働組合などは、金銭での解決を認めると、カネさえ払えば解雇できる、という事態になりかねないとして、反発しており、なかなか制度整備が進んでいないのだ。これを推進すると書いてあるわけだ。

 つまり、「働き方改革法」の次のテーマは、「解雇ルールの整備」というわけだ。これは高プロ制度以上に多くの従業員が関係するルール変更になるので、野党や労働組合の反発は今以上に激しくなるだろう。だが、世界的に見ても厳しいとされる日本の解雇ルールを見直さない限り、日本の雇用の流動性は高まらない。