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シニア起業の落とし穴

夢のない記事です。

まあ、これが現実なんでしょうね。

 

「人生100年時代」の生きがい探し

いずれ来る人生100年時代。定年や早期退職をした後、起業を検討するシニアが増えてきた。会社員人生で嫌な仕事も我慢してやってきた分、“一国一城のあるじ”を夢に見るシニアも少なくない。もちろん、そう甘くない現実も待ち受けている。気を付けたいシニア起業の落とし穴とは。

 「今しかない。最後のチャンスだと思った」「定年して、朝起きてやることがないのは耐えられない」「定年まで働いたが、まだ働けるなら働きたい」──。

 シニア起業相談などを手掛ける銀座セカンドライフ(東京・中央)が都内のホテルで開いた交流会。集まったシニアたちは、起業した理由を口々にこう話し、うなずき合っていた。

 その一人、福田悟さん(56)は今年1月に国際展示会の出展営業を支援する会社を設立。定年まであと少しだったが、「組織の中では自分のやりたいことはできない」と2017年末に退社、自分の会社を立ち上げた。

起業初年度は収入ゼロ

 従業員は自分1人。同じ業界で働いていたこともあり、数件の業務契約を結び、仕事は確保した。だが「そう簡単にいかないことは分かっています」と福田さん。初年度は役員報酬を設定しないため、収入はゼロになる。ゆくゆくは展示会の主催にも携わることで年商3000万円を目指しているが、当面は貯蓄で食いつなぐつもりという。

 定年や早期退職で会社員人生を卒業してから起業するシニア起業家が増えている。世界的に起業率の低さが指摘される日本だが、シニア世代に限ってみれば、必ずしもそうとも言い切れなくなっている。

 世界の経営学者が実施する「グローバル・アントレプレナーシップ・モニター調査」が日本でにわかに高まる“シニア起業熱”を映し出す。日本のシニア起業家(55~64歳)は15年に63万人と05年から約7割増。起業率は4%と、先進国(26カ国)平均の4.6%より低いが、10年前からの上昇幅は2ポイントと、1.1ポイントだった先進国平均より高い。少子高齢化でシニア労働力への期待が高まっていることや、年金の受給開始年齢の引き上げに伴う将来不安が背景にあるようだ。

 では、実際に起業してみてどうだったのか。何人かのシニア起業家に話を聞くと、総じて満足度は高かった(下の表参照)。何よりも“一国一城のあるじ”として自らの意思と判断で仕事ができる充実感があるようだ。

本当の人脈か

 もちろん、冒頭の福田さんが起業当初の収入がゼロのように、甘くない現実もある。

 大企業に在籍していたシニア起業家が陥りやすいのが、「名刺のワナ」。シニア起業の強みは、会社員として数十年間、働いてきた中で築いた人脈と経験だが、その人脈も、大企業の名前の入った名刺があったから築けたともいえる。

 中小企業診断士の那須藤生氏は起業を目指すシニアに対して、仕入れや販売などでかつての人脈を頼る場合にも、それぞれ「あてにできそうな人」をリストアップすることを勧めている。会社の名刺がなくなっても、付き合える相手がどれだけいるのかをしっかりと認識する。「必ず穴は出てくるが、そこを埋められるか。よくよく考えてみると、案外、人脈がないことに気付くもの」と那須氏は言う。

 リスクを伴うからこそ、「身の丈に合った起業が大切」と強調するのは、経営コンサルタントの松延健児氏だ。安易な借り入れや多額の自己資金の投入は禁物。自宅を担保にすれば、やっと手に入れた「ついの住み家」すら失いかねない。「売り上げが小さいうちは個人事業主としてやればいい。数万円かけて会社の登記をする必要はない」と松延氏は言い切る。どんな出費にも目を光らせ、小さく始めるのが鉄則という。

 そんな「小さく生んで大きく育てる」式で、今ではFC(フランチャイズチェーン)展開まで事業の幅を広げた「成功者」がいる。53歳で犬の散歩代行業を始めた古田弘二さん(76)だ。散歩だけでなく、しつけも請け負うサービスで、古田さん自身、これまでに1300頭の犬の散歩を「受託」した。現在も朝4時から分刻みのスケジュールで1日10~15頭を散歩させている。

 犬の散歩は技術が要らず、自分自身も散歩で健康になれる。新聞や雑誌でそんな古田さんの姿が紹介されると、「『私もやりたい』という人がどんどん増えていった」(古田さん)。そのほとんどが老後の仕事として考える60代以上だった。古田さんはシニア起業の希望者に、犬のしつけの仕方や顧客へのお礼状の書き方、見積もりの出し方など、様々なスキルを提供。そうして広げてきたのが「愛犬のお散歩屋さん」という名称のFC事業で、今では全国で80店以上が加盟する。

 加盟店の中には年商1700万円の店がある一方で、顧客が取れずに苦戦する店もある。ただ、成功するFCのオーナーに共通するのは「会社員時代も自分を律してきちんとやってきた人」だと古田さんは言う。犬の散歩といっても、「顧客集めには当然、手間と努力が必要」(古田さん)。チラシ配りやポスター貼りなど地道な仕事もしっかりやり切れるかが成否を分けるのだ。

 ここまではシニア起業の心構えを見てきたが、年齢を重ねてからの起業であればあるほど、早い時期に直面する問題がある。後継問題だ。

手塩にかけた店を手放す

 静岡県浜松市で開いたギョーザレストランを後継者不在を理由に今年、手放したのは加茂宏司さん(78)だ。17年11月にたまたま来店した飲食店大手ペッパーフードサービスの一瀬邦夫社長からの店舗の転借の申し出を受け入れた。ギョーザレストランだった店舗は今年3月、ペッパーの「いきなり!ステーキ」に衣替えされた。

 加茂さんが起業したのは63歳だった03年。約40年勤めたホテルを定年退職後、アパートやマンションの管理会社に再就職したが、市内の管理物件を回る中で、持ち帰りギョーザ店が繁盛していることに気付いた。繁盛店の駐車場から出入りする客をじっくり観察。来店客の車のナンバーを見ると、静岡市や豊橋市など近隣からも集客できており、推定年商は2億円と踏んだ。「このうち5%でも来てもらえれば、やっていける」。入念な調査と準備の末、起業を決めた。

 事業はとても順調だった。開業初日から用意したギョーザが売り切れるなど大ヒット。リピーターもつき、創業以来常に黒字で通信販売にも乗り出すなど生きがいを感じていた。

 その加茂さんは14年、持ち帰り専門店に加えて、「焼いたギョーザを食べてもらおう」とレストランを開業した。「想定が甘かった」と振り返るが、100坪の物件を借りることを決定。設備資金などで初めて1000万円借り入れた。

 結果は、地元客が想定よりも来ず「土日以外は超閑散としていた」と振り返るほどの失敗。2年間、想定売り上げに届いたことはなく累積赤字は2000万円に。ホテル業の経験から観光バスを呼び込めば集客できると気付き、旅行会社の目に留まりそうなホームページを作ることで徐々に客は増えたが、神経をすり減らす日が続いていた。

 そんな時に来店したのが一瀬氏。加茂さんとの会話の中で、「後継者はいるの?」と、加茂さんが漠然と悩んでいたことをずばり聞いてきたという。家族の後押しもあり、レストランを手放すことを決めた。

 原点回帰で持ち帰り店1店舗の経営に専念する加茂さんは今、「お金の心配をしなくて済むようになったのはほっとしている」と語る。「でも、手塩にかけた店を手放すのは、やはり寂しい」

 シニアになってからの起業は、後継問題との直面が若いころの起業よりも早い。年齢を重ねれば再就職は厳しく、事業のリスクはそう取れないとなれば、引き際も大事になる。

 加茂さんは気持ちを何とか切り替え、持ち帰りギョーザを浜松市のふるさと納税の返礼品にすべく市役所に接触するなど、新たな展開も始めている。「生きている限り、止まっていたくない性分なんでしょう」。事業は縮小しても、生きがいを感じるための経営を模索している。

(庄司 容子)