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2030年を占う 不動産価値の行方

ビッグデータと識者による分析

東京五輪の10年後、都市部の不動産価格はどうなっているか。主要な駅ごとに人口動態など多様なデータを使いシミュレーションした。

 今も昔も「人生最大の買い物」である住宅。だが、売り手と買い手の情報格差は大きく、多くの人は手探りの状態で売買を決断しているのが実情だろう。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計では、住宅需要と直結する世帯数が2025年に東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)でも減少に転じる。住宅市場に構造的な押し下げ要因が加わる中で、不動産価格の行方は気になるところだ。

多様なデータを活用して試算

 住宅の資産価値を左右する最大の要因が立地であることは、衆目の一致するところだ。そこで本誌は不動産価格予測サイト「GEEO」を運営する統計調査会社、おたに(横浜市)の協力を得て主要駅周辺のマンション価格や地価についてのビッグデータ分析を実施した。

 取引データや各種経済指標、人口動向などを組み合わせたデータを分析することで、将来の価格を推計した。東京圏、大阪圏、名古屋圏について中古マンションと、土地の価格推移を導き出している。

 マンションは実在のものではなく、08年に新築された物件をモデルとして設定。この物件について、18年の価格が30年までに、どう変化するかをシミュレーションした。

 詳細は次ページの地図と表を見てほしい。都心超一等地の恵比寿や表参道でも地価の上昇率は1%にとどまる。首都圏全体の人口動態にかかわらず根強いニーズが見込めるエリアであっても、大幅上昇は見込みにくいようだ。一方で郊外は想像通り、値下がりする地域が多い。マンションの価格の動きも地域によって差は大きい。

見逃せないライフスタイル変化

 今回のビッグデータ分析には含まれていない要素で、もう一つ重要なのが、ライフスタイルの変化だ。

 その象徴が名古屋だ。これまで「戸建て王国」と呼ばれてきた同地域で、高級住宅のニーズがマンションへとシフトしつつある。名古屋駅周辺の再開発が急ピッチで進み、利便性の高い駅近のプレミアム物件の供給が進んだ。夫婦共働きの「パワーカップル」など都市型ライフスタイルへの変化というニーズも取り込みつつある。

 リクルート住まいカンパニーの池本洋一SUUMO編集長は「これまで地方都市ではマンションは戸建てより安いのが常識だった。地方都市でそのパラダイムが変わりつつある」と指摘する。名古屋のみならず、広島や福岡、金沢など全国の地方都市で同様の変化が起きつつあるという。

 ただ29ページの識者インタビューで、不動産コンサルタント、オラガ総研の牧野知弘氏は別の見方を示している。働き方改革で自宅で仕事をする人が増えれば、駅近マンションは今ほどは好まれなくなると予想する。

 いずれにしても現時点で首都圏の都心マンションの価格高騰は著しい。一般の人でも手が届きやすいのは、中古マンションと郊外の戸建て住宅だ。特に戸建て住宅では、2000万~4000万円程度の価格帯で土地付き戸建て住宅を分譲するパワービルダーと呼ばれる業者が勢いを増している。

 識者の予想には温度差があるが、日本の人口減少を重視する点では一致している。リーマンショック後、不動産価格は一貫して上昇基調にあった。だが、そのトレンドが転換しつつある今、資産形成を第一の目標として住宅を取得する考え方は曲がり角に来ている。

不動産コンサルタント

長嶋 修

 人口減という構造変化に加え、高齢化に伴う社会保障負担の増加が重なり、住宅購入の適齢層の購買力が低下する。全国の住宅価格は年平均で3%減を見込む。全国の7割が「だらだらと下落していく」エリア。1割強は無価値、または解体費まで渡して住宅を引き取ってもらう「マイナス価値」のエリアになる。底堅いエリアと合わせて3極化がより際立つはずだ。

 価格下落の要因の一つとして、マンションでも空き家問題が顕在化するだろう。税優遇があった生産緑地の2022年解除の問題も大きなかく乱要因で、多くて30%ほどが生産緑地から宅地に転換するのではないか。「周辺から需要を吸い上げて底堅い値動きになる場所」「結果売れなくて周辺の価格も下げる場所」双方が現れ、価格としてはまだら模様になると見ている。

日本不動産研究所
不動産エコノミスト

吉野 薫

 共働きの家庭や、余暇を重視する人が増えることで、住宅市場では、「土地のブランド価値」よりも、通勤時間が短いなど「実質的な利便性」を重視する人が増える。東京の地価は一般的に、下町がある東側が安く、西側が高いが、都心に近い東側の人気が高まり、「東高西低」の動きが加速する。10年前と現在の公示地価を比べると、既にその傾向が出ている。

 ただ東京23区の住宅地の平均地価は10年前とほぼ一緒。実需に基づいているためで、2030年も平均地価は現状並みだと見ている。東京の区部以外、そして首都圏郊外で、車が必須な立地は大きく下がるだろう。地方では、仕事があり、買い物や余暇を楽しめ、外部から人が集まる「拠点性」が高い都市だけが上向く。県庁所在地の中でも、30カ所程度にとどまるだろう。

オラガ総研

牧野 知弘

 現在、都心部の駅近マンションが好まれているのは、通勤や買い物のしやすさといった交通の利便性を重視した生活を送りたい人が多いからだ。しかし、こうした考え方は2030年、いやもっと早い時期に崩れるだろう。「働き方改革」が進み、場所を決めずに働くフリーアドレスを採用する企業が増えた。これからは自宅やカフェなど、好きな場所でパソコンを開いて働く時代になりそうだ。毎日会社に行く必要がなくなり、交通の便が良い場所に住まなくてもよい人が増える。

 地価の高い場所は「駅から徒歩何分」ではなく、生活インフラの充実度や自然環境といった価値に変容していくのではないだろうか。となると、駅近マンションであっても、30年までには3~4割価格が下落するエリアも出てくると見ている。

榊マンション市場研究所

榊 淳司

 東京都の人口は、2030年をピークに減少に転じると予測されている。しかし、そこに至る前から、土地の“無価値化”とも言うべき波は都心に向かってひたひたと迫ってくる。東京23区の中で地価が上位に位置する千代田区や港区、中央区などでは今とさほど変わらないか、下がっても小幅になるだろう。しかし、下位の江戸川区や足立区、葛飾区になると2~3割下がる場所も想定され、場合によっては5割くらい下がるところがあってもおかしくないと見ている。

 また、税制面で優遇を受けてきた都市部の農地である生産緑地に対する措置が22年に解除されると、大量に宅地が供給される見通し。生産緑地の多い区は影響を大きく受ける。その中には高級住宅地の多い世田谷区も含まれる。