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行き詰まった日銀のETF買入れの行方

門司総一郎氏のコラムです。

良く調べてあります。市場に影響があるんでしょう。

 

規模縮小でも影響は限定的との声

 日本銀行は金融緩和の一環として、年6兆円のペースで上場投資信託(ETF)を買い入れてきましたが、足元、この買入れが変調をきたしています。今回は日銀のETF買入れについて考えてみます。
 日銀は昨年7月29日の金融政策決定会合で、「保有残高が年間約6兆円に相当するペースで増加するようETF買入れを行う」ことを決定しました。それまでの買入れ額は年間3.3兆円だったので、ほぼ倍に引上げたことになります。
 この6兆円のうち、3000億円は「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を組み入れたETFを、残りの5.7兆円は日経平均、東証株価指数(TOPIX)などの株価指数に連動するETFを購入対象とするものです。以下特に断らない限り、ETFという場合は後者の指数連動型ETFのみを指すものとします。
 今年に入って日銀は年5.7兆円に相当するペースで買入れを続けてきましたが、9月29日を最後に、買入れを見送っていました。10月30日、31日は買入れを実施しましたが、11月2日時点の年初からの累計買入れ額は4.5兆円にとどまっています。仮に年初から年末までに5.7兆円買入れるのであれば、残り2ヵ月で1.2兆円買入れなければなりません。市場では「5.7兆円の買入れは未達になる」との観測が広まりつつあります。

 いうまでもありませんが、日銀が買入れを停止したのは株価が急騰したためです。日経平均は今年に入って8月まで一進一退でしたが、9月に入って上昇に転じました。特に10月2日から24日にかけては、過去最高となる16日連続上昇を記録しています。
 日銀は通常、午前中に日経平均やTOPIXが下落した日にETFの買入れを実施します。しかし、今回は日本株があまりに強かったため、買うことができなかったということでしょう。

困難が予想される日銀のETF買入れ目標達成

 年内に未達分の1.2兆円のETFを購入することは容易ではないと思います。そう考える理由の1つは日銀自身の買いが株式市場に与える影響の大きさです。

 以前、外国人の買いとTOPIXの関係について分析したことがありますが、その時は1兆円の買いでTOPIXは5%上昇するとの結果が出ました。単純にこれを当てはめると、1.2兆円の買いは株式市場を6%押し上げることになります。

 「今まで日銀が買ってもそんなに株式市場が押し上げられた印象はない」という方もいると思います。確かに今まではそうでしたが、これは日銀が株価が上昇する日を避け、下落する日に、ETFを買い入れることにより、市場への影響を抑えていたことが理由です。しかし、これからはそうは行きません。年内残り2か月で1.2兆円のETFを購入するということになれば、株価が上昇していても買わざるを得ない局面が増えるでしょう。市場に与える影響は必然的に大きくなります。

 また日銀の買いを期待して、日銀が買う前に日本株を買おうとする動き(いわゆる提灯買い)が活発化することも考えられます。そうなれば株価押し上げ効果は更に増幅されることになるでしょう。

 足元の株高が続くことも考えておかねばなりません。元々目標達成が困難になったのは、株価が急ピッチで上昇してしまったことが原因です。今後もこの傾向が続いて、目標達成が更に困難になることも考えておくべきでしょう。

日銀が警戒すべき2つのリスク

 上記のように日銀のETF買入れにより株価を押し上げた場合、日銀が警戒しなければならない2つのリスクがあります。

 1つは日銀が株価を押し上げながらETFを購入することへの非難です。今でも日本の株式市場には過熱感が感じられますが、日銀が目標達成を目指して積極的にETFを買い進めれば、過熱感は一段と強まるでしょう。その場合、「日銀主導のバブル」といったような批判が出る可能性があり、下手すると政治問題になることも考えられます。これは日銀としては避けなければならないものでしょう。

 より深刻な問題になりかねないのが、目標達成のために日銀がETFの買入れを続けている間は株価が上昇しますが、達成後は一転買い手不在となり、株価が急落するような事態です。こうした事態を避けるためには、できるだけゆっくり購入を進めることが望ましいのですが、そうすると目標達成は困難になります。どのようにして買入れを進めていくか、今後日銀は頭を痛めることになりそうです。

買うべきか、買わざるべきか

 このように考えると、目標達成に固執することには弊害が多く、期間や金額にこだわらない姿勢が望ましいといえそうです。そもそも日経平均が2万円を回復し、足元の日本株が他市場を上回る強さを見せている中で、日銀が5.7兆円ものETFを買う理由を探す方が難しそうです。日銀のやるべきことは目標達成に固執することでなく、これを機に買入れ額の縮小も含めて、ETF購入のあり方や位置づけを見直すことだと思います。

 黒田東彦日銀総裁は10月31日の金融政策決定会合後の記者会見で年間6兆円(設備・人材投資ETFを含む)のETF購入の期間について「特定の時期を定めていない」と発言しました。これは、先ほど述べた「期間や金額にこだわらない姿勢」を示すものであり、評価できると考えています。

 この発言で、とりあえず日銀は12月末、あるいは来年3月末までに目標を達成しなくても、済むようになったと解釈しています。今後ETF購入については、今まで同様に、株式市場が弱い時に購入するやり方を続け、タイミングを見て、国債に続いて実質テーパリングに移行することになると思います。その場合、一時的には株式市場の悪材料になると思いますが、大きな影響はないと見ています。時々誤解している人を見ますが、テーパリングは買入れ規模の縮小であって、売却ではありません。

 また海外の投資家、特に年金や、ソブリンウェルス・ファンドなど長期の投資家のあいだでは、ガバナンスやマーケットメカニズムなどの観点から、日銀のETF購入に批判的な投資家の方が多いと思います。今年8月に米国出張した際にも面談した投資家のほとんどは日銀のETF購入に批判的でした。テーパリングが開始されれば、こうした投資家は逆に日本株を買ってくると思います。これもテーパリングの悪影響は一時的なものにとどまると考える理由です。