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大統領の“愛情”はいつまで?

アメリカはよくわかりません。

 

FRB新議長にパウエル氏指名

米FRBのイエレン議長の後任として、ジェローム・パウエル理事が指名された。イエレン氏の金融政策には市場の評価も高かったが、「オバマ色」がトランプ大統領に嫌忌された。足元の米経済は好調が続くが、景気が悪化し始めた時、大統領と良好な関係を維持できるか。

 「ノーマルな大統領であればイエレン氏を再指名するだろうが、今の大統領はノーマルではないからね(笑)。一貫性を維持するという意味では彼は最善のチョイスだろう」

 ドナルド・トランプ大統領が米連邦準備理事会(FRB)の新議長を発表する2日前、2001年にノーベル経済学賞を受賞した米コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授は本誌の取材にこう語った。「彼」とは、大統領が指名したジェローム・パウエルFRB理事のことだ。

 現在のジャネット・イエレン議長はスティグリッツ教授の米イエール大学での教え子。「過去に教えた中で、彼女ほど優秀な学生は数えるほど」とスティグリッツ教授は絶賛している。08年に発生したリーマンショック後、大規模な金融緩和を進めた米国で、混乱なく正常化に向けた利上げやバランスシートの縮小を決めた手腕を評価する声は多い。FRB議長に就任してまだ1期。本来、交代させる必要はないが、それでも交代に踏み切ったのは、大統領本人が認めるように、オバマ前大統領が指名した人物だったからにすぎない。

 その点、パウエル氏は共和党員であり、現行の「緩やかな利上げ」路線も支持している。現在の金融政策が維持される可能性が高い。人事において様々なサプライズを提供してきたトランプ氏だが、さすがに金融政策を大きく変えるリスクは取らなかった。

 もっとも、気まぐれな大統領のこと、今の“愛情”が今後も続くかどうかは誰にも分からない。

 足元の米経済は良好な状態を維持している。株価は史上最高値を更新しており、失業率も4.1%と低水準にある。景気拡大期間は100カ月を突破、トランプ氏の任期中に最長不倒の120カ月を超えるという見方も少なくない。

 事実、米国の各都市を訪れると至るところでつち音が響いている。アマゾン・ドット・コムの急成長に沸く西海岸のシアトルでは高層ビルやマンションの建設が相次ぐ。ソルトレークシティーやデンバーのような地方都市でも、活況に伴う人手不足が深刻だ。

減税に景気過熱リスクの指摘

 都市と地方で二極化が進んでいるのは間違いない。金融危機前より経済成長の勢いが落ちているという指摘もある。それでも、全体で見ればインフレでも景気後退でもなく、「ゴルディロックス(適温)」な状態が続いている。そのタイミングで大統領に就任したトランプ氏は強運の持ち主と言っていい。

 だが、テック企業の株価やジャンク債と呼ばれる投機的水準の債券の高騰は、現在の緩和的な金融環境の下で、利回りの取れる投資先が限られていることの裏返しだ。トランプ政権が進めている税制改正も経済にはポジティブだが、景気拡大期に減税することで、逆に経済を過熱させるリスクも指摘される。そうなれば、FRBは利上げのペースを上げざるを得ないかもしれない。

 株式市場ではなく債券市場に警戒せよ──。元FRB議長のアラン・グリーンスパン氏が最近そう警告しているように、長年にわたる金融緩和政策の結果、債券バブルが拡大している。FRBが金融政策を正常化させようとしているのはそういったリスクを未然に防ぐためだが、ひとたび金利が跳ね上がれば予想以上に高騰しかねない。

 「彼は強く、献身的で、賢い。上院で指名されれば、素晴らしい才能と経験でこの国の独立した中央銀行を導くという仕事に専念するだろう」

 11月2日の会見で、トランプ大統領はパウエル氏をそう称賛したが、残りの大統領任期の3年間、景気が拡大し続けると考えるのは楽観的に過ぎる。いったん景気が落ち込めば、トランプ氏が発信するツイッターで新議長が十字砲火にさらされかねない。ただでさえ、共和党の中にはFRBの裁量が大きすぎるという批判が根強い。その中で、中央銀行の独立性を守りつつ、どう経済をかじ取りするのか。新議長は世界でも有数の“難事業”に挑むことになる。(ニューヨーク支局 篠原 匡)