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転換すべき住宅過剰社会 「建てる」より「使う」にシフト

空き家問題対策

野澤千絵氏の記事です。

 日本の住宅事情は世界を見渡しても珍しい。新築が建ち続ける一方で、空き家も増えている。人口は減り、空き家も増えているのに、新築は大量に作り続ける「住宅過剰社会」だからだ。

 新築ラッシュを下支えしているのが金融機関だ。日本銀行のデータによると、2016年の個人向けの住宅資金などの新規貸し出しは16兆7000億円だった。過去最高だった05年(17兆円)に迫る水準で推移している。

 16年の新設住宅着工戸数は前年比6.4%増の96万7237戸と2年連続で増加した。都市部ではタワーマンションが乱立し、地方の不便な立地でさえ戸建てや賃貸アパートの建設が進む。人口1000人あたりの新築住宅着工戸数を欧米と比較すると、日本がいかに住宅を大量に作り続けているかが分かる。米国の2.3倍、英国の2.8倍にもなる。

 今後、住宅過剰社会は拍車がかかる可能性がある。25年ごろから後期高齢者が一気に増え、大量相続時代を迎えるからだ。核家族化した現代では、子供は自分の住宅を持っており、相続しても実家は空き家となってしまう。

 筆者の試算では全国の戸建て住宅の空き家予備軍(65歳以上の高齢者のみの世帯が住む住宅)は、約720万戸(戸建て住宅の4軒に1軒)にのぼる。このままだと、空き家が一気に増える危険性がある。しかも人口減が続く日本では19年ごろから世帯数も減少する。この状況で新築住宅を建て続けることは、家賃相場の下落や中古住宅の価値と流通性を低下させかねない。

構造問題抱える住宅業界

 日本は住宅過剰社会を助長する構造的な問題を抱えている。住宅業界は「常に泳いでいないと死んでしまうマグロ」と同じだといわれている。住宅を作り、売却して得た利益を次の開発につぎ込むため、新築を建て続けないと収益が確保しにくいビジネスモデルなのだ。用地内でいかに大量の住宅を建てられるかを考える傾向が強い。

 さらに自治体も住宅過剰社会を助長する。人口を増やそうと、本来であれば居住地として必要な条件が整っていない郊外の農地や工場跡地にすら、いまだに規制緩和を進める傾向がある。

 ただ新築住宅が悪いと主張しているわけではない。実需に見合った新築住宅を作ることは、購入希望者にとっても、都市政策や経済政策としてもメリットが大きい。

 問題なのは、学校や道路といった公共施設が未整備の場所でも、いまだに住宅が作り続けられ、居住地の拡大が止まらないことだ。実際、都市的な利用がされている土地の面積は、増え続けており、13年までの10年間を見ても約15万ヘクタール増えている(国土交通省調べ)。住宅が建つと、公共施設だけでなく、ごみ収集や防災対策といった公共サービスが必要になる。

 その一方で長年税金を投じてきた街では空き家が増え、その対応にも税金の投入が必要になっている。税収を支える生産年齢人口が減少するのに、公共投資は増えるばかりだ。特に大都市の郊外や地方都市では、単に近隣で人口を奪い合っているだけで、全体として人口が増えているわけではない。このまま居住地を拡大し続けると、宅配などの民間サービスの提供も今より難しくなる可能性がある。

 そろそろ短期的な経済効果や人口増加ばかりに目を向けるのではなく、持続可能な住宅・都市政策に転換することを本気で考えなければならない時期に差し掛かっている。

 では、どうすれば住宅過剰社会から転換できるのか。やはり都市政策を根本的に見直し、住宅の総戸数と居住地を増やさないことが不可欠だ。その上で、新築住宅の立地を誘導し、既存住宅・居住地の再生や更新に重きを置く。

官民連携を急げ

 具体的には、まず人口密度を保つ重点区域を決める。重点区域内の空き家を時代に合った設備や間取りにリノベーションする。利活用が難しい空き家は解体して、新築住宅用地や隣の敷地と統合して利用できるようにしていく。こうした取り組みへの支援策を充実させる必要がある。多くの自治体で空き家対策の支援は取り組まれているが、全域で一律の支援策を実施している場合が多い。今後は、開発需要を重点区域内へと誘導できるよう濃淡をつけることが不可欠だ。住宅政策と都市計画の密な連携が欠かせない。

 空き家利活用の取り組みは、自治体だけではノウハウに限界があり、官民連携が必須だ。

 ここで課題になるのが、開発需要があるエリアで、民間の不動産事業者やNPO法人などが、空き家や空き地の利活用をしたくても、所有者情報を把握することが難しいことである。重点地域が、他のエリアよりも人口や開発需要の受け皿になるよう、空き家や空き地の再利用に向けた「条件整備」が必要不可欠だ。個人情報という高いハードルはあるが、空き家の所有者情報の適切な取り扱いも含め、新たな枠組みを考えださなければいけない。

 相続放棄や未登記といった住宅の終末期問題を円滑に解決できる仕組みを用意できれば、自治体にとって新たな成長戦略の対象になる可能性がある。

 不動産デベロッパーもただ未開発地を探すのではなく、既存資産を生かした街づくりを提案できるように変わらなければならない。住宅を「つくる」よりも「つかう」ためのビジネスモデルを作れるかが鍵を握る。