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どうして米国株は最高値を更新しているのか?

「トランプ辞任なら株高」という説もあるが…

 

タメになる上野泰也さんのコラムです。

 

トランプ大統領は低支持率だが、下院補欠選挙で共和党勝利

 米国・モンタナ州で5月25日に行われた下院補欠選挙は、「ロシアゲート」疑惑などから不安定な足取りとなっているトランプ政権の今後を考える上で、地味ではあるが重要なイベントだった。結果は、24日に英紙記者への暴行で告発された共和党のジアンフォルテ候補が、民主党の新人候補を僅差で下して勝利。来年秋の中間選挙が早くも意識され始める中、トランプ大統領の低支持率にもかかわらず、昨年からの共和党の勢いがまだ持ちこたえていることが示された。

 共和党は上下両院で過半数を占めているが、中間選挙で改選となる議員(上院の3分の1、下院は全員)にとり、トランプ大統領との距離をどう取るかは非常に悩ましい問題だろう。5月19日にロイター/イプソスが発表した世論調査結果(14~18日実施)によると、トランプ大統領の支持率は38%で、就任後の最低を更新。「支持しない」が56%、「複雑な心境」が6%だった。共和党支持者の間で「トランプ離れ」が進んだことが支持率低下の主因とみられる。

共和党支持者の7~8割がなおトランプ大統領を支持

 けれども、同党支持者の7~8割がなお大統領への支持を表明している事実は見逃すことができない。FBIや議会による「ロシアゲート」疑惑の真相究明過程で、大統領自身も責任を免れない重大な事実が明らかになり、議会共和党も弾劾に動かざるを得なくなる場合(下院が過半数の賛成を得て弾劾訴追を行う場合)には、そのことが来年の中間選挙にどう影響するかについて、考えをしっかり巡らせる必要がある。

 株式市場などには、「スキャンダルと低支持率に苦しむトランプ大統領がいっそのこと辞任してくれた方が、民主党を含む議会との関係が好転して大型減税や金融規制緩和などの各種政策が実現しやすくなるから株価は上昇するはずだ」という説がある。

現在の米国の株価には、落ちてもリバウンドする力がある

 「カネあまり」状況が恒常化しているため、現在の米国の株価には「下方弾力性」があり、5~6月の相場動向からもわかるように、何らかの理由で急落してもその後にリバウンドする力が備わっている。米国株の一方的急落は考えにくいという相場観を、筆者は抱いている。

 だが、「ペンス昇格なら株高がさらに進む」といった過度に強気の見方には、さすがに同意できない。トランプ大統領が急きょ辞任する場合、初期反応として、ニューヨークダウ工業株30種平均(NYダウ)はおそらく1000ドル以上の急落になるだろう。その後、ペンス副大統領昇格で米国の政治がとりあえず安定するという見方からリバウンドするものの、全値戻しした上でさらに高値を更新していくようなシナリオは描きにくい。

トランプ大統領を見放した共和党議員は、次の選挙で落選する?

 よく考えてみよう。トランプ大統領が弾劾訴追に直面するなどして辞任するということは、共和党指導部およびそれなりに多くの議員が大統領を見放すということを意味している。その時までに、すでに述べたように共和党支持者の多くがなお大統領を支持しているとすれば、議会共和党に裏切られたと考えた彼らは、中間選挙の予備選における共和党候補者指名および本選挙で、共和党の現役議員の投票行動を確認した上で、大統領弾劾・辞任に賛成した議員は落選させようとするだろう。

 そうした共和党内での分裂や混乱が大きくなると、中間選挙の結果、上下両院のいずれか一方または双方の過半数を共和党が失う可能性が高くなる。ペンス副大統領が大統領に昇格しても、中間選挙を経て、各種政策の実現可能性はむしろ低下するというわけである。

 『ニューズウィーク日本版』は5月30日号で、「弾劾に動けない共和党の事情」と題した記事を掲載した。副題は「メディアと民主党が騒いでもトランプに造反すれば中間選挙で不利になる」。大半の共和党議員がそれでもなおトランプ政権を維持しようとしている理由としてこの記事は、①政策の実現(弾劾手続きが始まればほぼ全面的に法案審議が止まる見込み)、②支持率の問題(共和党内でなお支持率が高い大統領を見放すと党内右派から手ごわい対抗馬が出てくる)、③経済(有権者は「ロシアゲート」の展開よりも経済・株価の方に関心あり)の3点を挙げており、説得力がある。

米市場は、FRBのバランスシート縮小を警戒

 では、そうした「カネあまり」状況が終わりに向かっているのではないかと米株式市場が警戒感を強めやすい材料は何だろうか。筆者の見るところ、それはFRB(連邦準備理事会)のバランスシート縮小である。市場から買い入れて保有している住宅ローン担保証券(MBS)や国債などの満期償還を放置すれば、FRBのバランスシートは縮小し、ストックアプローチと呼ばれる考え方に従えば、金融緩和効果は減少する。それを防ぐためにMBSや国債をつなぎ購入してバランスシートの規模を維持しているのが再投資政策である。FRBは2015年12月、2016年12月、2017年3月と利上げに動いており、おそらくあと1~2回利上げした後で再投資政策の見直し(段階的な縮小・廃止)に動くとみられている。

 この再投資政策の見直しを最も警戒しているのは、株式市場ではなく、債券市場である。FRB(実際に動くのはニューヨーク連邦準備銀行)による国債の買い入れが減ると、需給が緩んで利回りが上昇するのではないかという警戒感が強い。だが、金利上昇はあまり警戒する必要がないと、筆者は楽観的にみている。むしろ警戒すべきは、株式市場におけるセンチメントの不安定化ではないか。

バランスシートの縮小は時間をかけて慎重に行われるだろう

 再投資政策見直しを材料にした大幅な金利上昇を筆者が見込まない1つの理由は、市場で実際にオペレーションを行うニューヨーク連銀のトップであるダドリー総裁が、不必要なショックを市場に及ぼすことのないよう慎重な舵取りを心がけると明言していることである。5月のFOMC(連邦公開市場委員会)議事要旨からもうかがえるように、事前にアナウンスした小刻みなペースに沿って段階的に、おそらく数年単位の時間をかけつつ、バランスシートを縮小させるのだろう。内外経済や金融市場に不測の大きな異変が仮に生じるようであれば、縮小プロセスが停止されることも十分考えられる。

再投資政策の見直し、QE実施時の「逆回転」が起きるリスク

 再投資政策の見直しに際しては、「カネあまり」状況の変化をイメージして米株式市場が過敏に反応してしまい、QE実施時の「逆回転」が起きるリスクがある。その場合、米国の長期金利は上昇ではなく、逆に低下することになる。

 もう1つ、「カネあまり」の持続性を考える際に大いに注目すべきポイントは、物価上昇の鈍さが日米欧の金融政策に今後どう影響してくるかである。

 筆者は以前より、財・サービス別の消費者物価指数(日米はCPI、ユーロ圏はHICP)のうち、原油価格や為替相場の動きによって前年同月比が上下に振り回されやすい財ではなく、サービスを重視しており、その水準・方向感によって物価の基調を見極めるという考え方を採っている。直近の状況をレビューしておきたい。