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中国格下げ、政府は「強気」だが……

米格付け会社のムーディーズが中国国債の格付けを引き下げた。景気刺激策などによる債務増加が理由だ。「適切でない方法で格付けを下げた」。中国政府は反論するが、国有企業を含めると債務残高は高水準。海外市場で資金調達する中国企業に悪影響が出るのは避けられず、景気の不安材料になりそうだ。

 「エコノミストや企業関係者の間では、債務比率の大幅引き下げは意識されていない。現在の水準より増えなければいいとする認識が大半だった」。3月下旬に中国を訪れた大和総研の齋藤尚登エコノミストはこう振り返る。中国の政府債務はここ5年の間に金額ベースで約2倍、企業債務もそれを上回るペースで膨張している。だが現地の雰囲気は楽観的だったという。

 そんな楽観に格付け会社が冷や水を浴びせた。

 5月24日、米ムーディーズ・インベスターズは中国の長期国債の格付けをこれまでの「Aa3」から「A1」に1段階引き下げた。同社は「力強い経済成長を維持するため景気刺激策への依存が高まっている。経済全体の債務を増加させる要因となるだろう」と、引き下げの根拠は財政状況の悪化にあるとした。

 中国側は反論している。中国の財政省は同日にメディアを通じて、「ムーディーズは適切でない方法で我が国の格付けを下げた。中国が直面する困難を高く見積もり、中国の供給側改革と需要拡大を低く見積もっている」とコメントを発表。不快感を示した。

 国際決済銀行(BIS)の統計によれば、足元の中国政府の債務残高は対名目GDP(国内総生産)比で46.1%。200%を超える日本やイタリアの132%などと比べて突出して高いわけではない。しかし、「中国の企業部門(金融機関除く)が抱える対名目GDP比で166.2%の債務のうち、8割(約130%)は国有企業のものとの分析がある。政府債務と合わせると対名目GDP比は約180%となり、主要国と比べても高水準となる」(齋藤氏)。

企業の資金調達コスト上昇へ

 中国政府の反論にかかわらず、資本規制の手綱が強まる国内市場を避け、海外で資金調達する中国企業にとってはマイナス影響が予想される。元ムーディーズの格付けアナリストで数多くのアジア企業の格付けに関わった森田アソシエイツ代表の森田隆大氏は、「国債の格下げは企業の格付けに影響を与える。中国企業のなかには、社債発行時の金利をこれまでより高く設定せざるを得ないところが出てくるだろう」と指摘する。資金調達コストが上がれば業績の下押し要因となる。

 くすぶる人民元の先安観も企業の懸念材料だ。政府の資本規制によって、いったん元安には歯止めがかかっているものの、6月にも米国が利上げすれば、再度、為替相場は元安・ドル高に向かう可能性もある。自国通貨安を食い止めるため中国が金融引き締めに動かざるを得なくなれば、景気の下振れリスクが高まる。

 17年秋に5年に1度の党大会の開催を控え、中国政府は経済の安定成長を最優先課題として掲げる。第1四半期のGDPは、前年同期比6.9%増と予想を上回った。統計上は底堅さを保っているようにみえる。

 だが、これまでの高い成長率を支えてきた財政出動、景気浮揚策は結果的に債務の膨張につながった。今回の格下げは、中国政府の強気の姿勢に警鐘を鳴らすものとなりそうだ。

(武田 安恵、上海支局 小平 和良)