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少子化・景気底上げに必須 求められる継続的な金融教育

井上智紀(いのうえ・ともき)

 

 子育てにかかる費用は増加の一途をたどっている。その大きな要因は教育費だ。塾や習い事などにかかる費用が膨らんでいる。例えば、ソニー生命保険が今年2月に実施した調査では、学校以外にかかる教育費が前年比2割増の月額1万2560円となった。所得が伸び悩む中、教育費負担が重荷となる状況が解消されなければ、少子化の流れにますます拍車をかけかねない。

 こういった現状を打開する一手として挙げられるのが、世代間の資産移転だ。祖父母世代が持つ資産が、子育て中の父母世代や孫世代に移転しやすくなれば、教育費など子供にかかる費用の負担軽減につながる。

生前贈与の促進が課題

 特に日本では家計の金融資産1800兆円のうち、その過半を60代以上の高齢層が保有しているとされている。長寿化が進む中、死亡時の相続は80代の親から、50代の子供へといった形になるケースが多くなっている。いわばシニア層の中での相続だ。このように子育てが終わっていたり、ゴールが見えていたりする段階で資産が移転しても、子育てという観点ではあまり支援材料にならない。消費の活性化、経済の底上げのためにも、最もお金を必要としており、潜在的な消費意欲の高い世代に資産を移転することが欠かせない。

 子育て世代への資産移転は政府も後押ししており、複数の制度が存在する。直近で始まったものとしては2016年1月に制度が始まった「ジュニアNISA」が代表的だ。同制度は個人の預貯金を投資に回す動きを促すため、株式投資や投資信託などの運用益や配当金を一定額非課税にする制度「NISA」がもとになっている。ジュニアNISAは、これまでの制度と違い口座を開ける対象を20歳未満まで広げたもの。将来の教育費の備えにすることも狙いの一つだ。

 口座は子供名義で、実際の運用管理は未成年者に代わって親権者が行う。通常のNISAは非課税枠が年120万円なのに対し、ジュニアNISAの非課税枠は年80万円。両親や祖父母が資金の出し手となるケースが多く、広い意味での生前贈与となる。

 ただ残念ながら普及が進んでいるとは言い難い。金融庁が公表する「NISA・ジュニアNISA口座の開設・利用状況調査」によれば、ジュニアNISAの口座数は、制度開始後1年間で19万口座、購入額は289億円(いずれも速報値)を集めた。しかし、先行して14年に始まったNISAが同じく1年間で825万口座、2兆9769億円を集めたことに比べれば、ジュニアNISAの出遅れ感は否めない。

 生前贈与を促す制度はほかにもある。13年度から18年度までの時限付きの制度として、祖父母などから孫が教育資金の贈与を受けた際に非課税になる「教育資金の非課税制度」。また15年度から始まった「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」では子や孫1人あたり1000万円まで結婚・子育て資金の贈与が非課税になる。住宅の購入や増改築の資金を贈与した際の「住宅取得等資金の非課税制度」も昨年の改正により21年末まで適用期限が延長された。

 こうした制度の利用は増えつつあるが、利用者はまだ限られている。前述の3つの非課税制度を合計しても、10年以降の延べ利用者数は約66万人、累計の贈与額は約560億円にとどまる。ジュニアNISAの購入額とあわせても1000億円にも満たない。家計の金融資産1800兆円に対しての比率はごくわずかだ。

安全性重視から抜け出せず

 なぜ、ジュニアNISAや各種非課税制度の利用が進まないのか。その要因の一つに金融リテラシーの低さがある。日本では投資や税金、年金などの社会保障といったことについて、学校で教えられる機会がほとんどなかった。

 もちろん、金融リテラシーの向上を目的に各種の取り組みが進められている。例えば13年に金融庁が公表した「金融経済教育研究会報告書」では、小・中・高等学校の社会科、公民科での授業に加え、家庭科で家計管理や生活設計についての教育を充実させる方針などを掲げている。

 ただ、まだ浸透したとは言い難い。そもそも学校で教える先生たちがそういった教育を受けてきていない。各地で開催されている社会人や高齢者向けのセミナーも、参加者は当事者意識を持つ人に限られる。

 制度が始まって1年のジュニアNISAの利用が今後拡大していくかどうかも、こうした教育にかかっているだろう。

 金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(2人以上世帯)」によれば、金融商品の選択基準は一貫して、「安全性」が「収益性」を大きく上回っている。実際の資産構成を見ても株式などの比率が高い海外に比べ、日本では教育資金の準備手段としても元本保証型の商品が選好されやすい。

 金融リテラシーを高め、資産の運用や効率活用につなげるには、教育の機会を充実させることが不可欠だ。これまでは、例えば確定拠出年金を採用した企業が社員向けセミナーを行う場合でも数回にとどまるケースが多かった。だが消費者の行動が変化するまでには時間がかかる。継続的な取り組みにつなげる仕掛けが必要だ。

 公的年金の給付水準のさらなる引き下げが予想される中、今後、祖父母の世代が資産移転に対し保守的な姿勢を強めることが予想される。高齢層が抱え込む金融資産を子や孫世代が使いやすくするには、社会保障制度に対する根強い不安を払拭する政策が欠かせないのは言うまでもないが、資産移転の手段についての教育機会の充実も必要条件となる。