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「こども保険」をめぐる不安と期待

小泉進次郎衆院議員ら自民党若手議員が提案した子育て支援のための「こども保険」構想を巡る議論が沸き上がっている。仕組みに課題は山積だが、簡単に潰していい動きでもない。

 まず、こども保険の仕組みから見てみよう。提案では厚生年金などの保険料を勤労者と企業それぞれ0.1%ずつ計0.2%引き上げる。国民年金に加入する自営業者などは月160円上げる。これで約3400億円の財源を生み出し、小学校入学前の子供約600万人の児童手当を1人当たり月5000円増やす(年間6万円)。また、保育園などを拡充し、年収360万円以下の世帯は保育料を無償にするという。

 さらにその後、第2段階として保険料を勤労者、企業側それぞれ0.5%ずつ計1%、自営業者は月830円引き上げる。これによって約1.7兆円の財源を生み出し、児童手当を1人当たり月2万5000円増やす(年間30万円)。現在の幼稚園、保育園の通園費は月1万〜3万円程度だから、実質的に幼児教育と保育を無償にするというわけだ。

 これが注目を集める理由の一つに、少子化対策・子育て支援策の一段の充実が難しくなっている事情がある。社会保障財源と位置づけられた消費税の引き上げが2度にわたって延期されたように、増税は政治的に極めて困難になっている。仮に予定通り2019年10月に10%に引き上げられたとしても、その使い道は既に決まっている。「子育て支援をさらに強化するには、さらにその次の引き上げが必要であり、いつになるか分からない」と小泉議員。その思い切りが国民の目を引いたのだろう。

 もう一つの理由は、高齢者に偏る社会保障費の使い方を変えようとしていることだ。社会保障費の相当部分は、年金、医療、介護など高齢者向けに使われ、少子化対策ははるかに少ない。「シルバー民主主義」とも呼ばれる現在の政治情勢を変えようというわけだ。

 動かない政治や岩盤のような社会保障の配分構造にぶつかろうとしている点で多くの人に期待を持たせた。

負担と給付の関係が成立せず

 だが、肝心の構想の中身は課題が多いと言わざるを得ない。1つ目に子供のいない人や子育ての終わった人たちは給付を受けられないのに、なぜ等しく負担しなければならないのかという不公平感がある。小泉議員らは「こども保険の導入で人口減少に歯止めがかかれば、経済・財政や社会保障の持続可能性が高まり、子供のいない人たちを含めみんなに恩恵がある」と言うが、負担と給付の関係は成り立っていない。

 2つ目は、小泉議員らは社会保障給付の高齢者への偏りを是正すると言いながら、この構想でも高齢者に負担を求めていない。重要な部分であるだけに、「後で検討」では案として十分とは言えない。

 3つ目は、そもそも子育ては保険の対象なのかという疑問である。年金、介護、医療は老後の生活や病気のリスクに備えるものだが、子育ては明らかに性質が違う。しかも、小泉議員らは子育ても保険の対象という前提に立ち、「年金など他の社会保障項目の財源は税と保険料の両方だが、子育ては税だけで賄われている。だから保険料を財源にできる」としている。

 消費税引き上げが困難な政治状況の中で、保険料を使うことで事態を少しでも動かそうとする姿勢は評価できる。しかし、基本的な部分にもこれだけ曖昧さが残っている。

 ところが、自民党はこの提言を6月の骨太の方針に盛り込むことも検討するという。これだけ課題がある中では、それは拙速ではないのか。

 なぜ急ぐ必要があるのだろう。現在の衆院の任期満了は来年末。それ以前に総選挙となる可能性もある。「20年の憲法改正を想定するなら、有権者受けのいい子育て支援は重要な施策になる」(亀井善太郎・PHP総研主席研究員)。それだけではない。こども保険の財源を保険料とすれば、年金などと同様に特別会計になる。特会は、税と違って政府の意向で財源を使いやすい。

 うがった見方をすれば、こども保険は、小泉議員らの思惑と異なる方向に流れる恐れさえあるのではないか。小泉議員らは焦らず、じっくり課題を潰しながら練り上げた方がいい。