儲ける&儲かる!株式投資

厳選推奨銘柄を大公開。CFP(R)が株の買い方を解説。毎日訪問で初心者が株取引のプロに。

市場が真剣に警戒する「第2次朝鮮戦争」

それでも「リスク回避の円高」はあてはまるのか?

金融市場が注目する「北朝鮮情勢」

 物価は相変わらず上がりにくく目標の2%がはるかに遠いため、日銀は身動きが取れず、粘り強く金融緩和を続ける姿勢である。FRB(連邦準備理事会)は、3月に追加利上げを前倒し的に強引に行った後は、様子見モードに入っている。ECB(欧州中央銀行)は5月7日に決選投票が行われるフランス大統領選挙の結果待ちで、様子見を決め込まざるを得ない。このように日米欧の金融政策が「フリーズ」状態になる中、市場の関心は地政学的なものを含む政治リスクの行方に寄せられやすくなっている。フランス、シリアと並んで注目を集めているのが、北朝鮮情勢である。

 4月上旬に2日にわたって米フロリダ州パームビーチで行われたトランプ大統領と習近平国家主席の米中首脳会談は、特に北朝鮮の問題で、どうやら物別れに終わったようである。両首脳の共同記者会見は行われず、共同声明も発表されなかった。ティラーソン米国務長官が記者会見で、両首脳は「北朝鮮の核開発が深刻な段階に達した」という認識で一致し、同国の核開発阻止に向けた協力強化で合意したと述べたものの、具体的な内容への言及はなかった。米国側出席者によると、トランプ大統領は今回の会談で、中国が協力しないなら米国は単独での行動も辞さないという考えを習主席に伝えて、核開発阻止に向けた意味のある行動(北朝鮮への強い圧力行使)を迫った。

一致した解決策を見いだせなかった米中首脳

 「これまでの首脳会談では共同会見か、合意に失敗した場合でも共同声明を発表しており、今回のような状況は極めて異例と言える。これは両首脳が北朝鮮核問題で一致した解決策を見いだせなかったことを意味する」と、韓国の聯合通信は指摘した。日本経済新聞は4月9日朝刊で、「2日間の会談後、米中共同の発表や中国側の記者会見も一切ない。深刻な対立があった証拠である」と断言した。

 米海軍のスウィフト太平洋艦隊司令官は4月6日のインタビューで、米国の対北朝鮮政策について、外交的・経済的な手段では期待したような成果が出なかったと言明。北朝鮮に先制攻撃をするかどうかはトランプ大統領の判断次第だとした。

 4月8日には、シンガポールを出港した米原子力空母カール・ビンソンを中心とする第1空母打撃群が南下する予定を変更して北方に向かったことが明らかになった。トランプ大統領は「無敵艦隊」だと形容し、北朝鮮を強くけん制した。

日本が戦闘に巻き込まれる懸念も

 ティラーソン国務長官は4月9日のテレビ出演で、シリアに対する米国のミサイル攻撃に関連して、「国際合意に違反し他国の脅威になれば対抗措置を受けるというメッセージだ」と述べて、国連決議に違反する核開発を続ける北朝鮮に警告を発した。ただし、米国の目的はあくまで朝鮮半島の非核化であり、北朝鮮の体制転換ではないと述べた上で、米国が金正恩委員長暗殺を1つの選択肢として検討しているとの報道については「そうした計画は把握していない」と否定した。

 こうした米国による軍事的威圧に対し、激しい言葉づかいで北朝鮮は反発している。

 日本政府の動きはどうか。共同通信によると、北朝鮮封じ込めも意識したとみられる米軍のシリア攻撃について政府筋は「米国を敵視する北朝鮮に衝撃を与えたはずだ。日米同盟の抑止力は高まった」と判断しているが、米国や日本が描く筋書き通りに北朝鮮が米国の力に屈するかどうか見極めきれない点が問題で、圧力が裏目に出て金正恩委員長の理性を欠いた自暴自棄の行動を誘発する可能性もあると分析している。政府内には米国が本当に対北朝鮮軍事行動に踏み切れば日本が戦闘に巻き込まれるとの懸念も漂っているという。

「重大な挑発を仕掛ける可能性もある」

 ドル/円相場は筆者が予想していた通り、110円さらには109円を割り込む円高ドル安になった。平壌では4月11日、北朝鮮の国会にあたる最高人民会議の第13期第5回会議が開催された。この日は金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が当時の党の最高職位だった第1書記に就任してから5年にあたる日でもあったのだが、目新しい動きはなかった。韓国の黄教安(ファン・ギョアン)大統領代行(首相)は同日、北朝鮮が「さまざまな記念日に合わせ、追加核実験をはじめ、重大な挑発を仕掛ける可能性もある」として、一層の警戒を指示した。その後、さまざまな動きが日々伝えられており、市場でも緊張が高まっている。

 北朝鮮の核兵器・弾道ミサイル実戦配備は、実際に戦争を起こして勝とうとする動きではなく、米国を直接交渉の場に引きずり出して北朝鮮の現在の政治体制維持への保証をとりつけることを最大の狙いとした「政治的なカード」だというのが、コンセンサスになっている。武力で朝鮮半島の統一を行おうとしても、米国との軍事力・継戦能力の差は歴然としている。金委員長が軍事的に暴発するようだと、それは体制の崩壊に直結するだろう。

 だが、何が起きるか分からないのが現実世界である。発生する確率は低いもののひとたび発生してしまうと損害が甚大なものとなるテールリスクに備えて、北朝鮮が自暴自棄になり米韓と交戦状態に入るケースで市場がどう動くのか考えておくことは、全くの無駄ではないだろう。

万一の時のシナリオを検討する

 現時点での筆者の考えを整理すると、次のようになる。

(1)【戦争になれば、円買いが急速に進む】
 第2次朝鮮戦争が発生した場合には初期反応として、「リスクオフ」の円買いが急速に進む可能性が高い。

 交戦国の通貨である米国のドルと韓国のウォンは、条件反射的に売りを浴びるだろう。米国に関しては戦費による財政赤字拡大、韓国に関しては戦争被害・マインド悪化・終戦後に起こり得る北からの難民大量流入という難題が悪材料視されやすい。北朝鮮の隣国である中国との経済関係が深いオーストラリアドルも、対円で急落するだろう。

(2)【ミサイルが着弾するなどの被害が出れば、円には売り戻しが入る】
 戦闘地域が朝鮮半島とそのごく近くにとどまれば、円は逃避通貨という位置付けのままだろう。しかし、北朝鮮のミサイルが日本の領土に着弾したり、特殊部隊が日本海側から上陸して在日米軍基地や原子力発電所を襲ったりする事態になると、円の逃避通貨としての信頼感が弱まり、いったん買われた円にはある程度売り戻しが入ると予想される。もっとも、そうした緊急事態は短期間で終息する可能性が高いため、「逃避通貨」としての円の位置付けは維持されるだろう。

(3)【為替相場の動きが急激な場合は、協調介入実施の可能性】
 為替相場の動きがあまりにも急激だと判断される場合、要するに円高ドル安の進み具合がイレギュラーで市場の秩序が壊れたと判断される場合には、G20・G7の従来からの合意に沿って、円売りドル買いの協調介入が実施される可能性がある。これはパニック的な円高ドル安を止めて、円安ドル高方向にある程度押し戻す効果を発揮するだろう。

(4)【戦争が終結すれば、難民流出や財政負担などの問題も】
 第2次朝鮮戦争がそう長引かずに終結した後には、北朝鮮から韓国・中国・日本などへの難民流出の問題、南北のインフラ再建需要とその財政負担といったマターが、市場で随時材料になっていくと考えられる。