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個人消費に変調か、ファミレス客単価に失速感

「フィットネスクラブ売上高」も前年割れ寸前

身近な経済指標に変調のシグナルが

 個人消費が変調していることを示すシグナルが、筆者が長くウォッチしている身近な指標の1つに出てきている。

 経済産業省が3月10日に発表した1月の特定サービス産業動態統計速報で、「フィットネスクラブ売上高」が前年同月比▲0.7%になった。マイナスは2012年1月以来、実に5年ぶりのことである。その後、22日に発表された確報では同+0.2%に上方修正され、マイナス圏への転落はかろうじて免れたものの、失速感があることに変わりはない。昨年がうるう年だったというテクニカルな要因も寄与してくるので、次回2月分では確報段階でもマイナスになるのではないか。

 売上高の内訳を見ると、会費収入計はフィットネスクラブが前年同月比+0.9%で、スクールが同+1.8%。利用料金収入は同+8.4%。顕著に減少したのは食堂・売店売上高(直営のもの)で、同▲24.0%である(9か月連続の減少で、マイナス幅は1月に急拡大)。

消費者の支出絞り込みがワンステップ進んだ?

 フィットネスクラブへの支出は、生活必需品的な基礎的支出ではなく、カテゴリーとしては、選択的支出に含まれる。けれども、高齢化が着実に進む中で従来以上に広がってきている健康志向から考えて、支出を絞り込もうとする際にも最後までそのまま残されやすいものではないかと考えられる。したがって、その変調に持続性があるのなら、消費者の支出絞り込みがワンステップ進んでしまったことが示されている可能性がある。次回2月分以降のデータを注視する必要があろう。

 個人消費の変調ないし停滞シグナルと考えられる身近な指標としてもう1つ、上がりにくくなっているファミリーレストランの客単価を見ておきたい。

 2月27日に日本フードサービス協会から発表された1月の外食産業市場動向調査で、外食売上高(全店ベース)は前年同月比+2.4%になった。プラスは5か月連続で、個人消費は持ち直しているのではないかという印象を抱く向きもあろう。

客単価の伸びが明らかに鈍っている「ファミレス」

 しかし内訳を見ると、目立って堅調だったのは相対的に価格が安い上に店舗の数が多い「ファーストフード業態」である(前年同月比+4.2%)。

 また、この月は利用客数が前年同月比+2.1%という高い伸びを記録し、売上高を持ち上げる主因になったのだが、これには天候要因も寄与したと考えられる。1月の雨天日数は、東京都で2日、大阪府で1日、前年同月よりも少なかった。

 景気動向を探る身近なインディケーターとして筆者が以前より注視しているのは「ファミリーレストラン業態」に限った売上高である。1月は前年同月比+0.8%という小幅の増加にとどまった。それ以上に重要なのは、消費者のマインドが良好であれば上がってくると考えられる客単価の伸びが、この業態で明らかに鈍っていることである。

 2014年4月の消費増税前後から2015年11月まで、この業態の客単価は同+2~4%台で、しっかりと伸びていた。円安などによるコスト増加分の上乗せ、付加価値をつけたワンランク上のメニュー提供という供給側の工夫がうまく運んでいた時期だったと言えるだろう。

 ところが、客単価はその後はなかなか伸びなくなっており、2016年8月と9月はマイナス。10月からは4か月連続の上昇を記録したが、最も高い2017年1月でも前年同月比+1.3%止まりである。

日本経済の安定感が欠如

 より包括的な統計からも、個人消費の直近の状況を見ておきたい。

 3月8日に内閣府から発表された昨年10~12月期のGDP(国内総生産)2次速報で、民間最終消費支出(個人消費)は前期比+0.0%にとどまった。1次速報の同▲0.0%からは上方修正されたものの、ほとんど伸びていない。日本経済は昨年後半、2四半期続けて純輸出(外需)主導の成長パターンになったのだが、海外経済や為替相場の動き、さらには主力である電子部品ではスマートフォンなど完成品の需要サイクルに振り回されやすいため、安定感が欠如していることは否めない。

 また、GDPデータを加工して作成することができる統計のうち、単位労働コスト(名目雇用者報酬÷実質GDP)を見ると、10~12月期は前年同期比+0.5%にとどまった。2016年1-3月期の同+2.3%がピークで、増加率は3四半期連続で鈍化してきており、これは個人消費にとり、ネガティブな動きである。

家計消費の面で、世帯の生活水準は切り下がっている

 月次で発表されている個人消費の関連統計も、概観しておきたい。内閣府の消費総合指数、および日銀の消費活動指数は、ともに直近レンジの近辺での上下動にとどまっている。

 また、家計調査の消費水準指数(世帯人員及び世帯主の年齢分布調整済)を見ると2015年から低下基調となっており、家計消費の面で、世帯の生活水準は切り下がっている。

 現金給与総額(雇用者1人当たりの名目賃金)は伸びが限られており、物価上昇を勘案した実質賃金は2010~2013年頃に推移していた水準から5%ほど切り下がった状態である。

勤労者世帯の平均消費性向は低下、背景に「長生きリスク」

 雇用者の数は伸びているため、1人当たり名目賃金と掛け合わせた総雇用者所得は上向いている。だが、家計調査を見ると勤労者世帯の平均消費性向(可処分所得に占める消費支出の割合)は低下しており、マクロでの所得増加が消費増加には直結しない構図になっている。そして、その背景として指摘する声が多いのが、若年層から中高年まで幅広い層により意識されている、将来不安(長生きリスク)の存在である。

 国内景気に関する筆者の基本認識は、2014年4月の消費税率引き上げの前からほとんど変わっていない。すなわち、持続的で力強いけん引役、野球の試合に例えれば、安心して任せられる「エースピッチャー」が見当たらないため、その「試合運び」は本質的には常に不安定であり、「風頼み」「風任せ」という側面がある。

 すでに述べたように、純輸出が昨年後半は予想外に好投したわけだが、電子部品の輸出に一巡感が今後出てくることが十分予想される上に、自動車の輸出では「トランプリスク」が警戒されるため、今後に大きな期待をかけるのは難しいだろう。

円高ドル安方向に大きく動くと、景気全体の腰折れリスクが浮上

 2016年度第2次補正予算で公共事業が上積みされており、今年4~6月期と7~9月期には公的固定資本形成(公共投資)が景気を下支えすると見込まれるものの、これは一時的な下支え以上の期待はしにくい需要項目である。

 そうした中で、仮に為替相場が円高ドル安方向に大きく動くようだと、企業収益さらには景気全体の腰折れリスクが、たちまち浮上する。安倍内閣の大番頭である菅義偉官房長官が為替リスクの管理を重視した発言をしているゆえんである。

 長いイニングを投げさせても安心して見ていられるような「エースピッチャー」が現れそうにないため、国内景気の持続的で力強い回復は期待できず、先行き不透明感は強いというのが結論である。