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金持ち企業の配分注視――資本コストで選別進める

 前日に276円下落した日経平均株価はすかさず217円上昇。1万9000円割れは取りあえず1日で終わった。支えになったのが、配当の権利取り売買だ。米トランプ政権など不透明要因が大きいなか、「キャッシュ」という最も確かなものへの関心は高まる。3月期末を越えれば次は4~5月の自社株買いシーズン。投資家はどの企業が配分を手厚くするのか、目を凝らしている。
 「余剰資金を自社株買いに向けてはどうですか。資本効率が上がります」。外資系運用会社の担当者は今春から、運輸やサービスなどの財務責任者やIR担当者にこう働きかけて回っている。本業の収益力が高いにもかかわらず資本効率の低迷する企業を選別。少額出資し、対話を通じて改革を促す。「日本企業は多額の手元資金を抱え、改革の余地が大きい」と話す。
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 今の日本株市場で物色の方向感は見えづらい。「テールリスク(確率は低いが起きれば被害が甚大なリスク)がいつ起きるかしれず、投資家は半身の姿勢」(いちよしアセットマネジメントの秋野充成氏)。慎重姿勢を強める投資家の注目する指標の一つが「総資産に対する手元流動性比率」。高いほどキャッシュリ ッチ企業だ。
 野村証券の若生寿一氏は「企業の株主還元は収益と連動し、膠着相場ほど還元に積極的な企業の株価が市場全体の値動きを上回りやすい」と指摘する。ゴールドマン・サックス証券は17年度の自社株買いは前年度比2割増の7兆8000億円に拡大するとみる。株主配分の拡充余地のあるキャッシュリッチ企業に対する市場の期待は大きい。
 この日もキャッシュリッチで知られるキーエンス、図研の株価がともに前日比2%上昇。ファナックや兼松エレクトロニクス、日本セラミックなども上昇した。いずれも総資産に占める手元流動性の割合が高く、昨年末比の株価上昇率が日経平均株価を上回る。
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 資本効率改善に対する企業と投資家の考え方にはギャップがある。企業価値向上には、自己資本利益率(ROE)が投資家の期待収益率である「資本コスト」を上回る必要がある。生保協会のアンケートによると企業は自社のROEが資本コストを「上回っている」と考えがちな一方、投資家は「下回っている」と見る傾向が強い。客観的に算出できる数値だが、自社の資本コストを把握した上で改善に取り組む例が少ないことの証左だ。
 それだけ 自社株買いの拡大余地があるといえるが、その手法には課題もある。投資家の批判が強いのが、「リキャップCB」だ。新株予約権付社債(転換社債=CB)を発行して自社株買いの原資とする手法で、1株利益が希薄化して「既存株主は損失を被る」(ニッセイ基礎研究所)と指摘される。東京証券取引所も最近、発行企業に説明を充実するよう注意喚起した。
 どの企業が余剰資金を株主配分に振り向けるのか。そしてその手法は最適なのか――。膠着相場が続き個別銘柄を選別する眼力が一段と問われる。(平沢光彰)