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東芝、落ち着きどころ見えぬ春

 アスクルの倉庫の大火災。丸6日間も燃え続けた末にようやく鎮火した。連日テレビに映る火炎を見て「さて東芝のWHウエスチングハウス)火事はどうだろう」と思った。消火するための水を必死にかき集めているのをあざ笑うかのように火勢が強くなる。焼け落ちる不安もあながち杞憂きゆう)ではない。
 2007年。西田厚聡社長当時)は1年前に買収したWHの事業が順調と誇示。全社の売り上げは10年度に10兆円を超え、妥当な価格のほぼ3倍の高値づかみと言われたWH買収費用の回収は当初の17年間から14年間に短縮、20年までに可能と大見えを切った。実際、HDDやプラズマの不振で苦境にあえぐ日立製作所を尻目に、東芝は好業績を上げていた。
 同年シャープは大阪・堺に総事業費1兆円超という世界最大の液晶ディスプレー工場の建設を発表。シャープの名を高めた三重県亀山工場をはるかにしのぐ、畳5畳分の基板ガラスを使用する世界初の第10世代工場。関連部材会社も敷地内に立地する新発想のモノづくり拠点だ。
 薄 型ディスプレーの主導権を巡って、液晶と激しく競争するプラズマのパナソニックも兵庫県尼崎工場を大胆に拡張、約3000億円を投じる世界最大のプラズマディスプレー量産拠点の建設を発表した。いざなぎ超えをうかがう景気拡大局面の中で、脱落を許されないイノベーション競争が後押しし攻めの経営に拍車がかかった。
 しかし、東アジア諸国が入り乱れた薄型ディスプレーの大乱で尼崎工場はもう存在しない。堺どころかシャープが台湾の鴻海精密工業の手に渡った。「汝な)れやしる都は野辺の夕ひばり上がるを見ても落つる涙は」。呉座勇一氏の著書でこのところ話題の「応仁の乱」後の都の荒廃を嘆いた飯尾彦六左衛門の和歌だ。変わり果てた事業拠点の姿にこの一首を連想する関係者も多いだろう。
 「世の中は何か常なる飛鳥川昨日の淵ぞ今日の瀬になる」古今集)。10年ひと昔というが、08年に発生したリーマン・ショック、11年の東日本大地震、東電福島原発事故などを経た産業界の地図の変化はすさまじい。とりわけ東芝、シャープ、パナソニック3社のこの10年の転変は誰が想像しただろうか。 名経営者ともてはやされたシャープの町田勝彦、パナソニックの中村邦夫氏らも今や敗軍の将。評価も様変わりの感がある。まさに読み人知らずの古歌の通りだ。
 なかでも、淵と瀬のひとまずの落ち着きどころがまだ見えないのが東芝。2年連続の巨額最終赤字で16年度末の債務超過は確実だ。西田、佐々木則夫両社長時代の原子力事業の拡大戦略が逆回転し、WHの減損処理がブラックホールのように資金を吸い込み、債務の増大不安が襲う。同社に連邦破産法の適用を申請して切り離すとしても、政治問題化し日米経済摩擦に発展する懸念もある。ジャンボ機のような東芝の事業規模がYS11に縮小しても軟着陸できるか。東証1部から2部、さらに次第によっては上場廃止へと高度を下げていくが、何よりも先立つ資金繰り次第で墜落懸念も浮上する。
 金属労協加盟企業などに対する春闘回答が出て、もう桜前線に気もそぞろ。在原業平は桜に引き寄せられながらも「世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」と詠んだ。心を騒がせる桜をWHに置き換えると綱川智東芝社長の心境になろうか。WHから解放され、心やすらかに春を観望したいに違いない。