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儲ける&儲かる!株式投資

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値上げ企業に熱視線――ヤマトHDが示した「新芽」

 2日の東京株式市場で日経平均株価は3日続伸。トランプ米大統領の議会演説で勢いを取り戻し、1月4日につけた昨年来高値にあと一歩まで迫った。いわゆる「トランプ相場」が復活した格好だが、市場では運輸大手のヤマトホールディングス(HD)も話題になった。安値受注で疲弊した同社の一手は、相場の強気派を勢いづける一因になった。
 「利益なき繁忙から脱却する第一歩になる」。楽天証券経済研究所の窪田真之氏は、ヤマトHDの「変心」に感慨深げだ。宅配の時間指定サービスの見直しや運賃引き上げを検討すると伝わり、同社株は1週間ほどで約1割上昇。2日は一時3%上げた。相場の主役への「変身」に驚いたのは、ファンドマネジャーやストラテジストとして運輸株を見続けてきた同氏だけではない。
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 市場でヤマトHDといえば、顧客離れを警戒して低採算にあえぐ企業の代名詞だった。ネット通販の驚異的な伸びが追い風となり、2017年3月期の宅配便の取扱個数は18億7000万個と5年前に比べて3割増える。一方、ネット通販「アマゾン・ドット・コム」など運賃単価の低い大口顧客の比率の高まりで、営業利益は13%減る見 込み。人件費や業者への委託費の負担が増すなかで、まさに「繁忙貧乏」の典型だった。
 値上げやサービスの縮小はシェアを失いかねない劇薬だが、人材不足を背景に我慢は限界に達しつつある。藍沢証券投資顧問室の三井郁男氏は「企業継続に必要なのは正当な対価と従業員への還元」と指摘する。顧客離れのリスクを負っても、採算重視にカジを切るメリットは大きいという。
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 なりふり構わぬ低価格戦略で鳴らしたヤマダ電機も「変心」した銘柄の1つ。ポイントの大盤振る舞いで売り上げを伸ばした過去と決別し、過度な値引きを抑制。利幅の厚い白物家電を販売の主軸に据える経営に転換した。17年3月期の売上高営業利益率は4・4%と、この2年間で約3ポイント改善。採算重視の姿勢を市場は評価し、株価は13年につけた安値の倍の水準に切り上がった。
 長らく製品価格の下落に苦しめられた日本企業だが、原料高などを理由とした価格転嫁も進み始めた。2月に砂糖の出荷価格を引き上げた日新製糖の株価は、11年の経営統合以来、最高値圏(株式分割考慮後)で推移する。4月には大王製紙が印紙用紙、日清オイリオグループがオリーブオイル の値上げを予定。値上げ発表後の株価は総じて堅調だ。
 ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏は「値上げで自己資本利益率(ROE)など採算の改善を目指す戦略は海外投資家に好まれる」と指摘する。日本企業はシェアや売り上げを重視して過当競争を繰り返してきたが、価格適正化で企業が潤えば賃金は上昇。消費に波及し、長らく苦しめられたデフレからの完全脱却も見える。投資家は兜町に芽吹いた「新芽」に目を細めている。(湯浅兼輔)