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儲ける&儲かる!株式投資

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輸出株に「独リスク」――長短金利低下、ユーロ安警戒

スクランブル

 トランプ米大統領の議会演説を波乱なく通過した1日。日経平均株価が274円上昇した一方で、リコー、キヤノンなど欧州の事業比率が高い輸出株は総じて精彩を欠いた。投資家が懸念するのはオランダやフランスの選挙だけではない。ドイツ発のユーロ安・円高圧力がじわりと高まり、日本企業の業績に思わぬ逆風が吹く可能性が出てきた。
 1日はリコーが前日比0・1%高の980円、キヤノンも0・3%高の3292円で引けた。パイオニアは逆行安だった。欧州で稼ぐ輸出株は直近1カ月の騰落率が軒並み日経平均株価(1・8%)より低い。
 確かに議会選挙などを控えたオランダ、フランスの政治リスクはその一因だろう。しかし「問題はもっと根深いところにある」。1日、あるヘッジファンドの運用担当者はこう話す。
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 注目するのは、ドイツの金利だ。リスク回避の資金がフランスなどから流れ込み、特に独2年債の利回りは直近でマイナス0・9%と、1月下旬のマイナス0・6%台から一段と低下。同じ年限の日本国債はマイナス0・2%台、米国債が1・3%前後なのに照らすとドイツ債の利回りは異常ともいえる低水準だ。
 ドイツ債 の利回り低下は日本株と無縁ではない。マネーは金利の高い通貨に向かうのが経験則。日本は日銀の長短金利操作で長期金利がさほど動いておらず、ドイツ債の利回り低下はそのまま日独の金利差縮小につながる。政治リスクを避けようとするマネーの安全志向と相まって、ユーロ安・円高を誘発しやすい。
 似たような状況は昨年6月、英国が欧州連合(EU)離脱を決めた直後にもあった。円相場は1ドル=106円台から一時99円台まで急騰。同時にドイツ国債の利回り低下が進んだ。
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 今回も身構える投資家は少なくない。みずほ銀行が内外の資金フローなどから試算したところ、今年末の水準は1ユーロ=114円。足元より5~6円ほど円高だ。「対ユーロの感応度が高い企業の株価上昇を抑える」(アセットマネジメントOneの鴨下健ファンドマネジャー)。1日の物色動向はこうした懸念を映し出す。
 野村証券によると、対ユーロで円高が6円進むと、主要企業の増益率を0・6%程度押し下げる。来期の予想増益率(14・6%)に比べると小幅に見えるが、ソニーやホンダなど複数の通貨で影響を受ける企業は多い。今期は秋以降に限られた円安の 恩恵を来期はフルに享受しようとしていた日本企業。想定外の円高は「来期のリスク要因として無視できない」(伊藤高志エクイティ・マーケット・ストラテジスト)。
 トランプ氏は1日の議会演説で強調こそしなかったが、米国の保護主義もくすぶる。UBSのグローバル・チーフ・エコノミスト、ポール・ドノバン氏は自動車や事務機器など米国向けの輸出品が欧州にとどまり、供給過多を招く可能性を指摘する。物価が下がれば金利をさらに下押しする。
 市場の関心は当面、利上げやトランプ政権の予算編成作業など米国に集まる。その陰に隠れがちな欧州から目を背けるのは禁物だ。(菊地毅)