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儲ける&儲かる!株式投資

厳選推奨銘柄を大公開。CFP(R)が株の買い方を解説。毎日訪問で初心者が株取引のプロに。

短期売買制限論の弊害――市場の流動性損なう恐れ

スクランブル

 14日は2016年4~12月期決算発表の最終日。発表延期の東芝はさておき、他の個別株の動きを見ると、発表後に乱高下する銘柄が目立った。政府や企業の批判論者が投資家の「短期志向」を抑えようとしても止まる気配はなく、皮肉な結果に陥っている。
 「こんなに株価が動く決算とは思えないんですが」。14日、大手証券のトレーダーは苦笑いした。例えば前日取引終了後に通期業績を上方修正したアルバックは17%高で取引を終えた。同じく上方修正組のミネベアミツミも一時19%高。半面、赤字拡大を発表したニコンは15%安となった。
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 ゴールドマン・サックス証券の建部和礼氏は市場予想と実際の決算結果が5%以上離れた「サプライズ銘柄」の株価の動きを分析。直近1年のサプライズ銘柄の株価反応幅がそれまでの平均に比べ、約2倍に拡大していることを解明した。
 なぜ決算後に株価は大きく動くようになったのか。理由は2つある。1つ目は当局の指導で、約1年前から証券会社のアナリストが決算前の企業取材を自粛するようになったことだ。
 2つ目は、決算後に業績の方向に従って順張りで投資する短期筋が市場の売買 を席巻するようになったことだ。異なる見方をする投資家の層が薄いため、株価は一方向に大きく振れる。
 「市場の短期志向は中長期的な企業価値向上の妨げになる」。政府の審議会や研究会の報告書を見ると、市場を席巻する短期売買を排除すべき悪者とみなす議論が盛んだ。政府の主張に経営者の一角も同調。短期志向を増長するだけとして四半期決算制度の見直しを主張する勢力も存在する。
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 だがいくら企業が「短期情報」を手元に隠そうとも、市場は先を行く。ビッグデータ解析の東大発ベンチャーであるナウキャスト(東京・千代田)は昨秋、驚くべき企業の業績予想モデルを開発した。マクロ経済情報や決算情報、POSデータなどのビッグデータを人工知能(AI)の機械学習を使って解析。まずは100社超の消費財・食品メーカーを対象に業績進捗をほぼリアルタイムで把握し、業績の変動をいち早く予想するモデルを作った。
 決算結果とAI予想値の乖離(かいり)は平均3%以下。かたやアナリストの予想平均は5%以上離れていたという。まだ試作版だが、すでに一部顧客にデータを提供し、投資判断に活用するファンドも出始めているという 。「米欧ではこうしたAIモデルをもとに売買するのが一般的になりつつある。市場の技術革新は止められない」。ナウキャストの林祐輔氏は話す。
 「税率を上げて短期売買を制限する議論も出ているようだが、そんなことをすれば流動性が下がり、長期投資家の保有株も下がってしまう」。マネックスグループの松本大会長は警鐘を鳴らす。どんな株主でも1人では企業を永続的に支えられない。だからこそ多様な投資家が互いに株を売買し、バトンを渡すように企業を支えている。市場の成立条件は誰もが好きなときに売買できる流動性だ。
 流動性は一度なくなればなかなか戻らない。市場がバブル崩壊後に得た教訓だ。短期売買を制限する前にやることはたくさんある。(証券部次長 川崎健)