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師走の株高、クジラ動く――積立金収入増で順張りに

 日銀の金融政策決定会合を無風で通過し、20日の日経平均株価は高値を更新した。今年の相場も残り7営業日。兜町では「掉尾(とうび)の一振」と呼ぶ年末の一段高を期待する声がしきりだ。尻上がりの株価上昇には、とんと姿を消していたある投資家の変身が影響している。上げ相場では売りに回っていたあの「クジラ」が師走の今、買いに動いているのだ。
 「実は3日前から年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が買ってきているんですよ」。大手証券の幹部が教えてくれたのは約1週間前。日経平均で1万9000円手前の水準から買い注文を入れてきたという。今週、別の大手証券の幹部にも聞いてみた。「クジラさんですか? 勢い良く潮を噴き上げるほどではないですが、水面には浮き上がってきましたよ」という答えが返ってきた。
 130兆円を超える巨大な運用規模から市場で「クジラ」という符丁で呼ばれるGPIFは従来、相場上昇局面では機械的に売りを出す逆張りの投資主体とみられてきた。時価ベースの資産組み入れ比率を一定に保つのが、公的年金運用の基本スタンスだからだ。
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 GPIFの動きが反映される信託銀行の日 本株の売買を見ると、その逆張りの投資行動ははっきりする。GPIFが日本株の組み入れ比率の目標を12%から25%に引き上げたのは2014年10月。それ以降で信託銀が日本株を買い増したのは大きく3つの期間で、おおむね日経平均が1万9000円より下の時だった。
 ところが、だ。先の証券会社の幹部たちの「クジラ買い」の目撃情報はデータでも裏づけられた。信託銀は12月5~9日に7週ぶりに現物株を買い越し、その買越額は2997億円と10カ月ぶりの高水準だった。
 なぜクジラは順張り投資家に変身したのか。「理由は1つしか考えられない。当初の想定を超える規模でニューマネーが入ってきているからですよ」。GPIF動向に詳しいSMBC日興証券の末沢豪謙・金融財政アナリストは説明する。
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 「ここ1~2年は雇用環境の改善などで積立金収入が計画を上回る一方、定年延長による繰り下げ受給の増加で年金給付額が計画を下回っている」(末沢氏)という。その影響で昨年度の年金特別会計では3・2兆円の「剰余金」が発生。今年度も同規模の資金流入が見込まれる。計画を超える資金流入の結果、年金積立金全体に占め る「短期資産」の比率は9月末に8・75%と半年前から3・61ポイント上昇した。
 複数の関係者によると、年末のこのタイミングで年度末にかけての資金流入額がみえてくるという。その振り向け先として相場押し上げも辞さずに日本株を買うGPIF――。気になるのはそこに確たる相場観があるのかどうかだ。掉尾という言葉は、人に捕まった魚が尻尾を激しく振る様子に由来する。クジラの尻尾の一振りが、上げ相場の最後を飾るクライマックスにならなければいいのだが。(証券部次長 川崎健)