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儲ける&儲かる!株式投資

厳選推奨銘柄を大公開。CFP(R)が株の買い方を解説。毎日訪問で初心者が株取引のプロに。

再び踊る買収ファンド―日本株、割安修正の契機に

 イタリアの国民投票などを控え、2日の日本株市場は持ち高調整の売りが優勢だった。だがPBR(株価純資産倍率)1倍割れの金融株や海運株が値を飛ばすなど「底上げ」の動きは途切れていない。そんな市場で、あるディールを機に究極の「バリューハンター(割安株投資家)」の動きが久々に騒がしくなっている。割安企業を丸ごと買う買収ファンドだ。
 トランプラリーまっただ中の先月22日。米大手買収ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が発表した日産自動車傘下の自動車部品会社カルソニックカンセイのTOB(株式公開買い付け)。日本のM&A(合併・買収)の歴史を塗りかえる記録ずくめのディールだった。
 まずは総額4983億円という規模。ファンドによる日本企業買収で最大だった2011年の米ベインキャピタルがすかいらーくを買った案件(約2600億円)の2倍近い規模だ。
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 株価への上乗せ幅(プレミアム)も飛び抜けている。TOB価格は1株1860円と、カルソカンセ株の上場来高値(90年の1181円)を大きく上回る。その結果、通常は30~40%にとどまる上乗せ幅は事前報道が出る直前 1カ月の平均株価に対して88%に達する。07年のシンプレクス・インベストメント・アドバイザーズのTOB(136%)に次ぐ水準だ。
 KKRは収益力からみて決して高すぎる買い物ではないとみているようだ。買収総額はカルソカンセのEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)の7倍強。世界の自動車セクターのEBITDA倍率の平均に近い。これまでは3~5倍で取引されてきた。
 「日産との親子上場が原因で株価はディスカウントされてきた。買収後は研究開発やM&A向けの資金を投入し、自ら成長する基盤を作ることができる」。KKRジャパンの平野博文社長はいう。大企業グループに属する子会社がファンドの外部資金を活用すれば、バリュエーションが一変するというメッセージだ。
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 今年はファンドのM&Aの当たり年。ファンドによる日本企業の買収金額は8870億円と昨年の2・4倍で、買収件数は最多だ。
 「日本は今、グローバル買収ファンドにとって世界で最も魅力的な市場とみられている」。ある米投資銀行幹部は明かす。米銀は金融規制に縛られてファンド向け融資に後ろ向きだ。一方、日本ではマイナス金利下で 少しでも厚い利ざやを稼ぎたい邦銀が買収資金を貸し付けようとファンドに群がっている。「売り物が格段に増えた。企業統治改革の影響で日本企業が本格的に事業の絞り込みに動き始めたのが大きい」。ある米ファンド幹部はいう。
 「音楽が鳴っている間は踊り続ければならない」。米シティグループの元トップがこの有名な言葉を吐いたのは、米サブプライムローンのバブルがはじける直前の07年。それから10年近くを経て、ぱったりやんでいたあの音楽がこの日本で流れ始めた。音楽がいつ止まるかは誰にも分からないが、ファンドがダンスを踊っているうちは日本株の割安修正が続くのだろう。(証券部次長 川崎健)