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アナリスト不在の不幸――強まる規制、荒れる株価

 28日は日経平均株価の上昇にブレーキがかかった。投資家が知りたいのは長い上昇局面での小休止なのか、終わりの始まりなのかだろうが、トランプ相場の出現を予想できなかったストラテジストたちの答えは歯切れが悪い。先行きが読めない今の市場で同様に頭を悩ませる専門家がいる。個別企業の業績と株価を分析するアナリストたちだ。
 「トランプラリーは健在か? そんなの分かりませんよ」。あるストラテジスト氏は、うんざりした様子だ。米大統領選後の円安・株高を予見できていた専門家はほぼ皆無だ。「プロとして予想を公表するのが怖い」と胸の内を明かす。
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 今のキーワードが「予測不能」だとすれば以前から悩んでいる人たちがいる。業種ごとに配置され、企業の業績と株価を分析するセクターアナリストだ。
 アナリストの仕事が激変したのは今年前半。昨年後半から欧州系証券2社のアナリストが企業決算の未公表情報を一部の顧客に知らせていた問題が発覚した。これを契機に野村証券などは2015年10~12月期決算から「プレビュー取材」と呼ぶ決算前の企業への取材活動を取りやめた。今春の16年3月期決算では大半の証券 会社に広がった。
 事前に企業から入手した早耳情報を一部の顧客だけに伝えるのは職業倫理に背く問題外の行動だ。しかし「君子危うきに近寄らず」とばかりに、証券会社のアナリストは社内規則で決算前に企業に接触するのを一切封じられてしまった。
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 自粛の効果は株価に顕著に表れた。予測が当たらなくなり、アナリストが業績予想を上方修正した銘柄を買って、下方修正した銘柄を売った場合のリターンは日本だけ急激に悪化した。ある外資系証券のアナリストは「会社から4~5年先を予想する骨太なリポートを書けと言われるが、3カ月先の業績すら分からない」との悩みを訴える。
 「規制が市場の価格形成を変えた典型例だ。米国でも同じことが起きた」と野村証券の村上昭博氏は話す。米国は00年10月、企業が未公表の重要情報を選択的に伝えることを禁じる「フェアディスクロージャー(FD)規制」を導入した。これ以降、企業の情報開示が後退し、アナリスト予想が当たらなくなった。
 金融庁は現在、日本版FD規制の法制化を進める。素案では「早耳情報に基づく短期的なトレーディングではなく、中長期的な視点に立って投資を行う という投資家の意識変革を促す」との意義がうたわれた。
 だが現実はどうか。アナリスト予想の正確性が薄れると決算発表後の株の変動率が上昇した。決算発表後の数日間だけ売買が膨らむ短期化が顕著だ。機関投資家の間では、ふたを開けるまで分からないという意味で「決算ギャンブル」との言葉がはやっている。
 アナリストがいなくなった市場で栄えるのはコンピューターによる短期取引と株価指数連動のパッシブ運用だろう。リポートを読み込んでいた個人投資家は今でも投資情報の減少に直面している。新規制が角を矯めて牛を殺すことにならなければいいのだが。(証券部次長 川崎健)