儲ける&儲かる!株式投資

厳選推奨銘柄を大公開。CFP(R)が株の買い方を解説。毎日訪問で初心者が株取引のプロに。

市場、戸惑う情報減少――決算後の株価変動大きく

 上場企業の2016年4~9月期の決算発表がピークを迎えた。米大統領選が市場の関心を集める中、企業分析に重きを置く投資家は個別株の値動きの大きさに戸惑っている。直近の収益動向を株価に十分に織り込めず、発表直後に大きく動く銘柄が急増した。原因を探ると多くの市場関係者を巻き込んだ、ある構造変化にたどり着く。
 米大統領選を巡る不透明感が後退し日経平均株価が大幅反発した7日、逆行安になったのがインターネットイニシアティブだ。先週末に17年3月期の純利益予想を4割引き下げ、7日の株価は11%安となった。下落率は2年9カ月ぶりの大きさだ。イビデン、ファナック、住友電気工業、東京エレクトロン。いずれも決算発表を受けて株価が大きく上下した銘柄だ。
□   □
 シンガポールを拠点とする日本株ヘッジファンドの運用責任者は悩ましげだ。昨年までは決算発表にかけて業績が上振れしそうな銘柄を買い、下振れしそうな銘柄を空売りすれば一定の投資収益を手にできた。だが「今年はその手法が通用しない」。企業の実態を絶え間なく株価に織り込むという市場の機能が失われつつあるからだ。一体、何が起きているのか。
 今年から証券アナリストは原則として企業の業績を事前に調査できなくなった。昨年以降、ドイツ証券やクレディ・スイス証券で重要情報を一部の顧客だけに伝えていたことが判明し、金融庁や日本証券業協会でアナリストの役割を再定義する流れが強くなった。
 野村証券は昨年末から企業のヒアリングに基づく決算前の業績予想をやめた。許斐潤エクイティ・リサーチ部長は「アナリストはより中長期の目線で企業を見る筋肉を鍛える必要がある」と語る。9月には世界の空調市場を分析する長文のリポートを出した。
 日本は短期から長期にシフトしようとするが、事前調査が以前から禁止されてきた米国は意外な方向に進んでいる。ドローンを使って石油の備蓄状況を調べたり、人工衛星から米ウォルマートの駐車場を撮影して消費者の動向を調べたり。アナリストらが企業からの情報に頼らずに業績を分析する手法が広がっている。
 「年金基金など資金の出し手は一定期間ごとの成果を求める」。最近来日した米運用会社の首脳に話を聞くと、四半期決算の重要性は薄れていないとの答えが返ってきた。一方で日本では決算短信を簡素化する動きが進む。政府の方針を受けて東 京証券取引所は、17年3月末以降の決算発表時に損益計算書などの財務諸表の開示を省略し、後の開示を容認する方針だ。
□   □
 企業の負担を減らして経営者と株主の対話を促し、中長期の企業価値の向上につなげるという名目だ。だが、しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用部長は「企業を定点観測する上で、四半期決算の情報が薄っぺらくなるのは困る」と当惑を隠さない。
 企業情報を巡る枠組みは大きく変わろうとしている。多様な価値観が行き交う株式市場で「短期と長期」のバランスをどう保っていくのか。最適解を探る動きは、まだ緒に就いたばかりだ。(川上穣)