儲ける&儲かる!株式投資

厳選推奨銘柄を大公開。CFP(R)が株の買い方を解説。毎日訪問で初心者が株取引のプロに。

悩める空売り投資家―パッシブ台頭、歪み戻らず

 なかなか下げない相場だ。26日の日経平均株価は日銀のETF(上場投資信託)買い入れの思惑で午後切り返した。苦悩するのは割高株の空売りを多用するヘッジファンド。彼らを「泣く子と日銀には勝てぬ」と突き放すのはたやすいが、データからは興味深い事実が浮かび上がる。日銀の買い増しよりずっと前から日本では空売りが機能しなくなっているのだ。
 「決算発表を機に割高なディフェンシブ株の調整が本格化するとみて空売りしているのですが、期待通りに動きませんね」。東京に拠点を持つ米ヘッジファンドの日本株担当者は話す。
 このファンドは割安な銘柄を買い(ロング)、割高な銘柄を空売り(ショート)するロングショート戦略を採る。個別銘柄の株価の歪(ゆが)みに着目し、その修正に賭けるヘッジファンドの代表的な運用戦略だが、どうにもうまくいっていないという。
□   □
 1月の日銀のマイナス金利政策の発表以降、ファンド勢は夏場にかけて銀行株の空売りを積み増していった。そして9月には日銀が「総括的検証」を発表。これを機に銀行株の空売りは買い戻された。次なる空売りの標的はディフェンシブ株(生活必需品とヘルス ケア)。ディフェンシブ株の空売り残高はここにきて、銀行株を上回ってきた。
 だが、ファンドの思惑通りに下げないのが今の相場。例えば、25日の取引時間中に通期業績予想を上方修正した雪印メグミルク株。当日こそ材料出尽くしで下げたが、26日は急反発した。
 「日銀の買いが市場を歪ませ、海外マネーを日本から締め出している」。そんな最近よく聞く説明を裏付けるような話だが、原因は本当に日銀買いなのか。
 空売りが多い銘柄の騰落率を国際比較すると、今の状況はもっと複雑だ。
□   □
 2015年初から日米欧アジア各市場で騰落率を比べると、日本だけが空売りの機能しない市場になっているのが一目瞭然。しかもこの傾向は日銀がETF買い入れ増額を決めた7月より前から顕著だ。つまり、日本で空売りが効かない「主犯」は、日銀のETF買いではないことになる。
 グラフをより詳しく見ると、16年に入ると日本だけでなく、世界各市場でほぼ同時並行的に空売りが機能しなくなってきているのが分かる。「今年は世界でロングショートの投資家が苦戦していることを映し出している」。野村証券の村上昭博チーフ・クオンツ・ス トラテジストはいう。
 なぜそうなったのか。「根本的な原因は、世界のマネーがアクティブ運用からパッシブ運用へとシフトしているからでしょうね」。野村のある幹部はいう。
 よくよく考えれば、日銀のETF買いも指数を買うパッシブ運用の一つ。「コスト対比で最も効率的な運用」という大義名分が幅をきかせ、市場の「総パッシブ化」は世界で同時進行的に広がる。世界のヘッジファンドの運用成績さえも指数化され、ETFで安く買える時代だ。ただ、それが市場や株価の歪みを放置させている原因だとするなら、今の相場の「やりにくさ」の真相は「官製相場」よりもっと根深い。(証券部次長 川崎健)