儲ける&儲かる!株式投資

厳選推奨銘柄を大公開。CFP(R)が株の買い方を解説。毎日訪問で初心者が株取引のプロに。

ロシア政治経済の実像(下)日ロ交流拡大へ機運、医療・農業にチャンス。

指南役 高橋浩さんロシアNIS経済研究所副所長)
トヨタの工場建設が関係発展のきっかけに
 ロシア経済が低迷している現在、日ロ貿易も一服感があります。需要の低迷やルーブル安による価格の高騰などが響き、これまで好調であった自動車の対ロ輸出が大きく減少し、輸出全体でも落ちこんでおります。一方、輸入も金額ベースでは減少しています。ただ、こちらのほうは価格の下落の影響が大きく、商品によっては量が増えました。
 短期的には思わしくない日ロの貿易の状況です。ただ、振り返れば、この十数年で日ロ貿易は大きく様変わりし、日本の輸出入に占めるロシアの割合が格段に上昇しました。輸出面では自動車、輸入面では原油、天然ガスの比率が大幅に拡大しました。日本にとって、これら商品のロシアの重要性は大きく高まりました。
 自動車は前述のように、一時期は日本の輸出仕向け地の2位になったこともあります。輸入では原油、液化天然ガスLNG)、石炭では日本の輸入額の3~4位で非常に重要な国であります。非鉄金属、木材、水産物の重要度も高いです。
 急速なモータ リゼーションが、トヨタのロシア工場進出を促し、2005年のロシアでの工場建設の発表は、日ロの経済関係発展のブレイクスルーとなりました。日本の大企業がロシアを一大マーケットと認識し、ロシアで工場を建設しはじめました。
 最近の日ロの輸出入の状況は、日本が自動車を輸出し、石油ガスを輸入するだけの単純な構造にみえます。とはいえ、貿易の拡大によって、日ロ双方のプレーヤーの裾野が広がっています。例えば、小さなことかもしれませんが、ロシアから、そばの輸入が数年前から始まっております。
 ビジネス界の関心はどうでしょうか。14年3月に東京で日ロ両政府が主催した「日露投資フォーラム」が開催され、当会が事務局を担いました。過去最高の日ロ双方で1000人を上回る参加者がありました。この3月はクリミア併合直後で、ロシアが世界中から非難されていた時期です。
 今年9月のウラジオストクの東方経済フォーラムは、安倍首相が参加したこともあり、今回はロシア側発表で、日本企業の参加者が250名弱にのぼりました。昨年の前回は政府関係を含めて150名程度であったことからすれば、参加者が大幅に増え、このフォーラム での日本の存在感は高まりました。
日本企業の進出、政府が後押し
 それでは、ロシアにおけるビジネスチャンスはどこにあるのでしょうか。そのヒントの1つは、安倍首相が今年、首脳会談でプーチン大統領に提示した8項目の経済協力プランにあります。
 経済協力プランの内容は、1)健康寿命の伸長、2)都市作り、3)中小企業交流、4)エネルギー、5)ロシアの生産性向上、6)極東の産業振興、7)先端技術、8)人的交流です。2013年の安倍訪ロ以降の重点項目にも広げれば、食品、農業も入っています。このいくつかをベースにビジネスチャンスを展望したいと思います。
 健康問題は、ロシアの喫緊の課題であります。ソ連崩壊後、男性の平均寿命が60歳以下になりました。その状況は大分回復しているものの、医療はソフト、ハードの両面で立ち遅れております。
 ソ連崩壊後、ロシアは10年まで人口が減少 する国でありました。その後は、人口増に転じ、出生率も回復しております。ロシアが明るくなったのは、大都市で子供が増えたことと関係があります。人の健康、子供、そして食品、農業、この周辺は、ロシアの産業としても伸びているところです。
 極東のハバロフスクで日揮や北海道銀行などが主導して温室栽培に取り組んでおり、東方経済フォーラムでも注目されました。極東の産業振興とも関連しているからこそ大々的に取り上げられているのでしょう。
 都市作りは、18年のサッカーワールドカップなど、大イベントに伴う新しいインフラ整備のなかでチャンスが出てきます。日本の国交省は、民間企業を集めた日露都市環境協議会を設置し、日ロ双方の企業を支援しています。
 日ロの協力事業のひとつは17年7月に開催されるロシア最大の産業見本市「イノプロム」に日本がパートナー国として大々的に参加することがあります。イノINNO)とはイノベーション技術革新)を意味し、先端技術好きのメドベージェフ首相が大統領時代に開始したものです。
 ロシア国民は日本、日本人が大好きで、サー ビスの高さ、高い品質に高い関心があります。久々の大規模展示会を含む日系企業が多数参加するイベントに参加することが、チャンスのきっかけとなるかもしれません。
 もちろん、いろいろなリスクもあります。ロシアの経済低迷、ロシア企業の支払い能力の低下という根本的な課題はあります。また、先端技術の輸出規制もありますし、米国、EUの制裁の状況を無視してはならないでしょう。諸手続きも、官僚主義の国なので大変です。
 マスコミでのロシアのイメージが悪いわりには、日本企業のロシアへの関心は意外に低下していません。プレーヤーの幅が非常に広がったことと、日本政府の後押しがあるからです。多くの日本企業にとって、地理的に近い割には、ロシアは視界になかったというのが実感でしょう。高い品質と独自性を誇る日本企業としては、調べる価値は大いにある市場です。
 たかはし・ひろし 一橋大社会学部卒、1985年にソ連東欧貿易会現ロシアNIS貿易会)に入る。貿易保険機構カントリーリスク研究所主任研究員への出向を経て、2008年から貿易会内のロシア東欧経済研究所現 ロシアNIS経済研究所)副所長に就任。日本大学、神奈川大学等で講師をつとめる。著作に『早わかりロシアビジネス』日刊工業新聞社)など。