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ロシア政治経済の実像(上)国際社会で逆風、脱・資源依存なるか。

指南役 高橋浩さん(ロシアNIS経済研究所副所長)
根強いプーチン支持、制裁下でも揺るがず
 安倍首相は5月にロシアのソチでプーチン大統領と首脳会談を行ったのに続き、ウラジオストクで9月2日に会談、12月にはプーチン大統領が訪日予定です。北方領土問題を含め、日ロ関係が一気に動く気配がでてきました。そこで、2回に分け、最初はロシア経済を中心にロシア側の事情を、次回は日ロの経済ビジネス関係を中心に状況をまとめます。
 ロシアには、政治経済面で逆風が吹いているとの印象が強くあります。この印象は間違いではないものの、一面的過ぎるところもあります。
 確かに、国際社会におけるロシアの現状は良くありません。
 2014年のソチ冬季オリンピックで世界に華々しくアピールするもくろみは当てが外れ、ロシアのクリミア併合によって、ロシアは先進国から制裁を受けることとなりました。
 このたびのリオデジャネイロ・オリンピックでロシアの組織だったドーピング問題が発覚し、ソチ・オリンピックがその舞台として注目されるというおまけまでつきました。シリア問題をめぐっても、ロシアと欧米諸国の対立が続いて おります。
 主要国では、中国のみが仲良くしているような印象があります。しかし、ロシアへの制裁は、米国、EUおよび日本を含むその友好国の一部にとどまっています。例えば、韓国は全く制裁を実施してないのです。インド、ブラジル、南アフリカなどのBRICs諸国も制裁を実施しておりません。EU諸国のなかでも、ギリシャやハンガリー等、制裁に反対する国もいくつかあり、ロシアが世界で孤立しているわけではないのです。
 一方、ロシアの国内情勢を見ると、プーチン体制は盤石です。
 9月18日には、ロシアの下院選挙がありました。ロシアの与党である「統一ロシア」が過半の議席をとりました。他には、共産党、自由民主党、公正ロシアなどの主要政党がありますが、基本的にプーチンを支持しています。大都市部などは投票率は低く、ロシア国民が一丸となってプーチン政権を支持しているわけではないですが、欧米を中心とする批判は、逆にロシア国民の団結を強める作用を及ぼしているようです。
 ソ連解体後の1990年代の大きな混乱に伴う危機的な状況を何度も経てきたロシア国民は、忍耐強いところがあります。ナポレオン、ヒットラーの 厳しい侵略の歴史を乗り越えたロシアは、過酷な状況になればなるほど、我慢をする術を知っていることは認識しておくべきでしょう。
ルーブル下落で苦境、成長モデル見直し迫られる
 経済についてみてみましょう。ソチ・オリンピック後のウクライナ問題を契機とする経済制裁、その後の原油価格の低迷は産油国のロシアに大きな打撃を与えました。
 2014年の国内総生産(GDP)成長率は0.7%のプラスでしたが、15年は3.7%のマイナスでした。通貨ルーブルは14年の秋から急落し、1ドル=20~30ルーブル台が60ルーブル台に下落、16年初頭には80ルーブルを超え、その後は少し戻して、60ルーブル台を前後しております。ルーブル高の時代に外国から資金調達をしていた企業は返済に苦慮し、輸入品の支払いに難儀する企業も多くなりました。
 確かに為替下落は打撃です。しかし、00年代の毎年10%を超えるようなインフレが続いていたことを考えると、実質レートを考えれば1ドル=100ルーブルを超えてもおかしくないという計算もありえます。ルーブル高による過去の恩恵のつけが一挙にきたという考えもできます。
 それで は、ロシアは経済危機なのでしょうか。確かに車が売れなくなり、不動産価格も低迷し、生活は苦しくなったようです。しかし、失業率をみると、16年7月で5.3%、欧州、米国などと比べて悪くありません。財政も赤字ではありますが、2000年代はリーマン・ショック前までは黒字財政を確保し、赤字転落後もGDP比で1~2%程度の慎重な財政運営を行っています。政府債務もGDP比で20%を下回る水準におさまっております。
 原油安に対処するために作った2つの基金を政府は活用し、財政と民間企業への支援を行っています。外貨準備も減ったとはいえ、9月現在で約4000億ドルあって、世界のなかでは高い水準にあります。
 S&Pやムーディーズなど格付け会社は政府債の格付けを、15年にそれまでの投資適格のレベルを下回る水準に下げました。これは少し行き過ぎとみていますが、後述のロシア人気質からすると、危機感をあおることはよいことかもしれません。
 ロシア経済が安心と言っているわけではありません。原油が高くなればまた高い成長となるかというと、そうではなさそうです。ロシアのGDPは、ソチ・オリンピック前の原油価格が まだ高かった13年から成長が鈍化しはじめ、資本投資の伸びもほぼゼロとなっていたからです。
 ロシア経済は13年に原油・資源高をベースにした成長モデルは行き詰まりを示していたのです。もちろん、ロシア政府は、以前から石油ガス依存経済の脱却を目指し、ハイテク奨励政策、輸入代替政策など、自動車産業の育成のための外資優遇策などを実施してきました。
 自動車分野などは、外資が多く入り、ある程度成果がありましたが、石油ガス依存から脱却は時間がかかるでしょう。ロシア経済は大きな変革を必要とする時期にきております。
 たかはし・ひろし 一橋大社会学部卒、1985年にソ連東欧貿易会(現ロシアNIS貿易会)に入る。貿易保険機構カントリーリスク研究所主任研究員への出向を経て、2008年から貿易会内のロシア東欧経済研究所(現ロシアNIS経済研究所)副所長に就任。日本大学、神奈川大学等で講師をつとめる。著作に『早わかりロシアビジネス』(日刊工業新聞社)など。