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さが美争奪戦が問う――対抗買収「内輪の論理」に一石

 マーケットが少し温まってきた印象だ。起爆剤はM&A合併・買収)。5日は日立製作所による売却方針が報じられた日立工機株が急騰した。そんな市場でプロたちが注意深く行方を見守るディールがある。呉服店のさが美を巡る争奪戦だ。金融危機後に久々に日本で起きたこの買収合戦は、規模が小さいながらもこの国の市場のあり方に一石を投じている。
 発端は、赤字が止まらない非中核事業を売却するというよくある案件だった。
 売り手は旧ユニーグループ・ホールディングス。9月のファミリーマートとの統合前に身ぎれいにしようと、8月17日にさが美の保有株発行済み株式の約54%)を国内ファンドのアスパラントグループに売却すると発表。アスパラントは翌18日からTOB株式公開買い付け)に着手した。
 買い取り株数はユニー保有株と同数。上場を維持するために、ユニー以外の株主が応じないよう買い付け価格を1株56円と直前株価や過去の株価より3割程度低くした。
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 これにかみついたのが、ニューホライズンキャピタル NHC)だった。
 和装卸の市田の経営を再建した過去の経験を生かそうと、さが美とユニーに株買い取りと具体的な再建プランを打診していた。別のファンドがTOBを突然発表したことでNHCは慌てて対抗買収案を発表した。
 NHCは9月27日に1株70円の対抗案を表明、30日には90円に引き上げた。再建資金として5億円の第三者割当増資も計画。ユニーが持つ債権買い取りを含めるとNHC側の買収総額は42億円強。アスパラント側の30億円を大きく上回る。ユニーやさが美がこれを放置すれば、外部には分からない「内輪の論理」を優先したととられかねない。
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 複数の買収者が公に価格や提案の優劣を競う買収合戦は米欧では一般的だが、日本ではまれだ。早稲田大学大学院の服部暢達客員教授は「公明正大に価格を競う買収戦は、リスクマネーを適切に配分する株式市場の機能を高める」と話す。
 政府が義務づけた「企業統治指針」を持ち出すまでもなく、売り手や対象企業の取締役会が高い値段を提示した対抗案を真剣に検討するのは株主への当然の責務。米国では1986年の化粧品レブロンの買収合 戦を機に、高い買収価格を提示した買い手に会社を売るのを義務づける「レブロン基準」が米市場の普遍的なルールとして定着した。
 いっそのこと、NHCは正式に対抗TOBに踏み切ったらどうか。そうなれば、さすがにユニーとさが美も提案を放置できない。今の日本市場に対する「官製相場」という批判は、民間のふがいなさの裏返し。民間発の「さが美基準」を確立するチャンスなのだから。
証券部次長 川崎健)